2014年1月10日金曜日

インド映画「ボンベイ」を観て

 この映画は、1995年にインドで公開されたもので、言いようもないほど複雑な映画でした。恋あり、都市と農村の対立あり、宗教対立あり、カースト間の対立あり、戦闘あり、テロリズムあり、音楽・ダンスあり、陽気さあり、悲惨さあり、要するに何でもありの映画でした。「ムトゥ」と「大地のうた」を足して、5を掛けたような映画です。
 主人公は大都市ボンベイで働いており、故郷の村へ帰って結婚することを望む父親と対立していました。都市と農村の対立です。その主人公は一人の女性に恋をしますが、問題は彼女がイスラーム教徒だったということです。つまりそれは、ヒンドゥー教とイスラーム教との宗教対立であると同時に、ヒンドゥー教徒から見ればイスラーム教徒はアウトカーストなどで、カースト制の問題でもあります。結局、2人は駆け落ちして結婚し、2人の子供が生まれて幸福に暮らしますが、やがてこの親子は、当時起こった宗教対立に巻き込まれていきます。この事件は、1992年に実際に起きた事件で、両教徒間の激しい戦闘やテロが繰り返され、その過程で子供たちは命を失いそうになります。
 この映画は、インドの矛盾そのものを映し出しているような映画です。ヒンドゥー教の父親とイスラーム教の母親との間に生まれた二人の子供は、一体何教徒になるのでしょうか。上位カーストとアウトカーストとの間に生まれた子は、どのカーストに属するのでしょうか。この映画の監督は、こうしたことが問題にならないような時代が来ることを願って、この映画を制作したのでしょう。
しかし、この映画はあまりにも盛りだくさんで、かつ忙しく、こうした問題をゆっくり考える暇もありませんでした。それにしても、この映画にダンスが必要とは思われません。

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