福岡伸一著、2009年、2011年、木楽舎
本書は、生命とは何か、人間とは何かという問題を生物学的観点から論じたもので、大変評価の高い本で、娘の蔵書のなかにありました。
基本的には、私は人間を生物学的に分析することには、あまり好感を持っていませんでした。もちろん生物学的側面は、人間にとって重要な要素ですが、それがすべてではありません。とくに、人間という生き物を細胞レベルまで分解して分析することは、人間の本来の姿を否定することになります。人間は、生物学的だけではなく、哲学的、文学的、社会的、歴史的な側面をもっています。そして、著者自身がそのことをよく理解しており、生物学的な分析は人間の一つの側面にすぎないこと、さらに細胞レベルまで分解して人間を論じることが不適切であることを主張します。
細胞は絶えず消滅し生成し続け、同じ細胞が静止しているわけではありません。そしてさまざまな細胞が相互に作用しあいながら、激しく動き、その動きの中で一定の均衡を保っています。それが生命であり、それが動的平衡ということです。著者は、次のように言います。「水の流れには不思議な秩序がある。ねじれのようでもあり、らせんのようでもある。少しずつ形をかえつつ、ある種の平衡を保っている。しかも二度と同じ水ではない。しかし流れは常にそこにある。」
まるで仏陀をモデルとしたヘルマン・ヘッセの「シッダールタ」を読んでいるようです。(「映画で仏教を観る」https://sekaisi-syoyou.blogspot.com/2015/01/blog-post.html)つまり、人間とは何か、生命とは何か、ということについては、すでに古代に答えが出ていたのです。科学は、ようやく古代の賢人たちのレベルに近づいてきたと言うべきかもしれません。
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