2020年7月17日金曜日

「数学の大統一に挑む」を読んで

エドワード・フレンケル著 2013年 青木薫訳 文藝春秋 2015
 著者は、旧ソ連で生まれ、数学に卓越した能力を発揮しましたが、ソ連では数学で職をえることは困難でした。しかし幸運にも彼の論文がアメリカのハーバード大学の教授の目に留まり、彼はハーバード大学に客員教授として招かれました。当時ソ連ではペレストロイカが進められ、ソ連人が外国に出国しやすくなっていたため、彼はアメリカに渡ることができました。1989年、21歳のときです。
 著者が目指したのは数学の諸分野や量子物理学の大統一で、その萌芽は前に述べた天才数学者ガロアに認めることができます。著者にとって数学は芸術のように美しく、これ程素晴らしいものを、数学を苦手だと思い込んでいる人にも理解してもらいたいと考え、本書を執筆しました。筆者はこの上もなく数学を愛し、本書の原題は「愛と数学」でしたが、訳者がこのタイトルでは本屋が本書を置く棚を間違えるのではないかと心配して、上記のタイトルにしたそうです。
  おそらく、より重要なのは、分からないことがあっても気にしなくていいということだ。わたし自身、数学をやっているときの90%は、そう思ってやっている。お仲間というわけだ!そういう分からない感じこそ、数学者であることの本質的な部分なのだ。しかし、悪いことばかりではない。何もかもが容易に理解できてしまう世界なんて、つまらないじゃないか!数学をやることの面白さは、その混乱を克服し、理解し、謎を覆い隠しているヴェールを少しばかり引き上げたいという、われわれ自身の燃えるような情熱にある。そしてそれができたとき、すべての苦しみは報われる。
 大変励まされる言葉ですが、それでも私にはほとんど理解できませんでした。それは本書のせいというよりは、すでに私自身に、400ページを超える大著を精読する気力がなくなっているからだと思われます。
 「数学者」については、過去にこのブログで触れていますので、参照して下さい。
「「大数学者」を読んで」(https://sekaisi-syoyou.blogspot.com/2018/01/blog-post.html)
「「ガロア 天才数学者の生涯」を読んで」
 また、数学に親しみをもたせるため、彼は「愛の数式」という映画まで制作しました。それは構成において三島由紀夫の「憂国」に強い影響を受けたそうですが、この映画は日本で観ることができないようです。なお、「憂国」は、三島由紀夫原作・監督・主演の短編映画で、三島の死後夫人の要望ですべてのフィルムが破棄したそうですが、フランスでは海賊版が出回ってといるそうです。しかし最近三島家でフィルムの原本が発見され、DVD化されているそうです。

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