2020年3月11日水曜日

「ガロア 天才数学者の生涯」を読んで



加藤文元著 2010年 中公新書

 ガロアは19世紀フランスの数学者で、このブログの「「大数学者」を読んで」(https://sekaisi-syoyou.blogspot.com/2018/01/blog-post.html)で触れており、そこでガロアについて次のように述べています。「フランスのガロアは10代のうちにガロア理論なるものを生み出し、現代数学への扉を開いたとされますが、七月王政に対する革命運動で一時投獄され、さらに20歳の時女性問題で決闘を行って死亡しました。」
 ガロアは品行方正な優秀な生徒でしたが、15歳の時数学に目覚め、以後数学以外にまったく関心を寄せない不良なってしまいました。私には数学はまったく理解できませんが、とりあえず「ガロアの黙示録」と呼ばれる文を引用します。「……数多の計算を結合する足場まで跳躍すること、操作をグループ化すること、そして形によってではなく難しさ(曖昧さ)によって分類すること。これこそ、私の意見では、本来の幾何学者たちの仕事なのだ。……」この考え方は、彼の死後一般化する集合論と結びつき、私にはアインシュタインの相対性理論と結びついているようにも思います。ガロア理論は数学のパラダイムを一新するものだったとされます。
 本書は、ガロア理論を分かりやすく説明するとともに(それでも私には全然分かりませんでした)、ガロアが活動した歴史的な背景を丁寧に説明しています。そして、自分の論文が正当に評価されないことへの苛立ち、社会の不公正への激しい怒り、初恋と失恋、決闘と死を描いており、大変面白く読むことができました。彼は死の直前に友人に次のように言ったと伝えられています。「泣くな。二十歳で死ぬためにはあらん限りの勇気が必要なのだ。」

 ガロアがもっと長生きしていれば、どれ程の業績を残しただろう、とよく言われます。しかし、樋口一葉が若くして多くの業績を残して死んでいったように、ガロアも短い人生でなすべきことをなして、死んでいったのだとおもいます。


0 件のコメント:

コメントを投稿