2017年12月29日金曜日

映画「僕たちの家に帰ろう」を観て

2014年に中国で制作された映画で、中国の河西回廊に住むユルグ族という少数民族の、幼い二人の少年が、父母のもとへ帰っていく旅の物語です。






















 河西回廊とは、黄河の西にあるからこう呼ばれ、南に6千メートル級の祁連(きれん/チーリェン)山脈が、北にゴビ砂漠があり、その間に東西に900キロ近い細い通路があり、随所にオアシスが点在しているため、古くから東西交易の通路として重要な役割を果たしてきました。また、この地域には、チベット系の民族、テュルク系・モンゴル系の民族や漢民族などが侵入し、支配し、国を建てました。この映画で扱われているユルグ人はウイグル系で、10世紀には王国を築いたこともあるそうですが、その後西夏によって滅ぼされました。やがてユルグ族は離散し、今日この地域に居住するユルグ人は1万5千人弱だそうです。 
 河西回廊には、中国が認定した55の少数民族のうち22の少数民族が居住しているそうで、このことはいかに多くの民族がこの地で交錯したのかを示しています。しかし、今日ではユルグ人も含めてこの地域の少数民族の多くは、日常語として中国語を話し、彼らの言葉はすたれつつあるようです。ここに住む人々は放牧を生業として暮らしていましたが、「映画で現代モンゴルを観て」(http://sekaisi-syoyou.blogspot.jp/2015/09/blog-post_5.html)で述べたように、この地域でも牧草地の乾燥化かが進み、多くの人が羊を売って都市で暮らすようになりました。かつてラクダで旅をした交易路に鉄道が建設され、都市には近代的な建物や工場が立ち並んでいました。
 映画では、両親のもとを離れて暮らしている兄のバーテルと弟のアディカーが、夏休みに両親に会うために旅に出るところから始まります。両親は、牧草地を求めて遠くへ行き、子だもたちは学校へ通うために残ったのです。二人はラクダに乗り、必要な食物と水を携えて旅にでます。まるで三蔵法師の時代に戻ったようです。途中、廃墟となった遺跡や廃屋が多数あり、洞窟には歴史を描いた美しい壁画が描かれており、また廃屋には文化大革命時代の壁新聞がいっぱい貼られていました。まさに、時空を超えて中国の歴史がよみがえります。兄弟は喧嘩をしながらも、たくましく旅を続けますが、ようやく父に巡り合ったとき、父は河原で砂金を拾う仕事をしていました。そして父が行くはずだった草原には、今や工場が立ち並んでおり、もはや放牧生活などは困難な時代となっていたのでした。
 この映画は、兄弟の旅の物語や放牧生活の衰退といった問題を語るとともに、今も昔も変わらない河西回廊の姿をたっぷりと見せるための映画ではないでしょうか。