2020年7月1日水曜日

映画「グーレース・オブ・モナコ」を観て




















2014年のフランス・アメリカ・ベルギー・イタリア合作の映画です。ハリウッドのオスカー女優グレース・パトリシア・ケリーが、地中海に面する小国モナコの王妃となる、という物語で、実話に基づいたフィクションです。庶民の女性が王子と結婚して王妃となるということは、多くの女性が一度は夢見るシンデレラ物語ですが、グレースはミニ国家の王妃として、国家存亡の危機に直面することになります。



ミニ国家とは面積・人口が少ない国家のことで、世界全体ではかなり存在しますが、ここではヨーロッパにおけるミニ国家にのみ触れておきたいと思います。ミニ国家が形成される背景は様々ですが、ヨーロッパの場合、バチカンを除けば、中世における地方の領主が、ヨーロッパに国民国家が形成されてくる過程で、さまざまな理由が重なって、独立国家として生き残ったようです。独立国家とはいえ、その規模があまりに小さいため、それだけで存続することは困難です。したがってこうした国は、近隣の大国に外交権を委ねたり、軍隊による防衛を委ねるなどしていることが、多いようです。経済的にはカジノや観光業などに力を入れますが、経済規模が小さいため、一部にはタックス・ヘイブン(租税回避地)となって、億万長者を集め、金融センターとして栄えている国もあります。しかしタックス・ヘイブンの存在は周辺国にとって不愉快であり、このことがモナコに重大な危機をもたらします。こうしたミニ国家の一つモナコは、伝統的にフランスに従属する傾向がありましたが、19世紀後半に領土の95%をフランスに売却し、その見返りとしてモナコは主権を回復しました。
一方、アメリカの女優グレース・パトリシア・ケリーは、1950年代にはアカデミー賞主演女優賞を受賞するほどの人気女優で、彼女を高く評価していたヒッチコックは、彼女を「雪に覆われた活火山」と称しました。同じ時代に人気絶頂だったマリリン・モンローとは異なり、気品に満ちた容姿が「クール・ビューティー」 (cool beauty) と賛美されました。そして1956年、グレースはカンヌ映画祭で知り合ったモナコ大公レーニエ3世と結婚します。1962年、フランスのド・ゴール大統領はアルジェリア戦争の戦費調達のため、モナコへの軍隊の投入をにおわせ、モナコは存亡の危機にたたされます。映画では、グレースがこの危機を乗り切るのに大きな役割を果たしたことになっていますが、真相について私は知りません。その後彼女は慈善活動などで活躍し、モナコ大公妃として人々に認知されるようになりますが、1982年、車を運転中に脳梗塞を発症し、崖から転落して死亡しました。52歳でした。
 映画は、当然ながらグレースを美化する傾向がありましたが、それなりに興味深く観ることができました。

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