著者佐野眞一ほか 2010年 山川出版
本書は、主として戦前の上海を、8人の筆者がそれぞれ思いを込めて書いています。上海の歴史については、「映画で上海を観て」(https://sekaisi-syoyou.blogspot.com/2015/08/blog-post_29.html)を参照して下さい。
上海は、「東洋のパリ」とか「魔都」などとも呼ばれ、多くの顔をもった都市でした。この町では、犯罪者、スパイ、文学者、革命家などさまざまな人々が蠢いており、また日本にとっては、西洋への最も近い窓口でもありました。本書で扱われているテーマは、どれも大変興味深いのですが、ここでは内山書店のみを紹介しておきたいと思います。
この書店は大正6年から昭和20年までの30年間、上海の共同租界で開業していました。書店にはさまざまな本がおかれ、さらに自由にお茶が飲めるサロンがあり、そこでは読書するのも談笑するのも自由で、多くの人がこの書店を訪れました。このサロンには魯迅も頻繁に訪れ、後には官憲に追われた魯迅が書店の2階に居候をしていたそうです。その魯迅をスメドレーがしばしば訪問していたそうです(「偉大なる道 上下」を読んで https://sekaisi-syoyou.blogspot.com/2016/04/blog-post_20.html)。
戦後も日本人には、上海に特別の思いを持つ人がいました。私の父はほとんど歌を歌わない人でしたが、それでも時々、昭和26年に発表された「上海帰りのリル」という歌を口ずさんでいました。父は上海に行ったことはないとは思いますが、この歌は多くの日本人の上海への郷愁を歌った歌なのだろうと思います。
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