2020年6月29日月曜日

映画「ビリーブ 未来への大逆転」を観て

















 

 

2018年にアメリカで制作された映画で、男女不平等と闘ったルース・ベイダー・ギンズバーグという女性を描いています。
 アメリカに限らず、世界の多くで女性は不平等に扱われていますが、その社会的・歴史的背景はさまざまですので、ここではそうした問題には触れません。ただ、ここで問題となっているのは、「女性は家庭にいることが自然の原理である」という考えであり、特に19世紀の欧米では、これがイデオロギーにまで高められ、社会のあらゆる場面に反映されていました。
主人公のルース・ベイダー・ギンズバーグは実在の人物で、ハーバード大学のロースクールに入学しましたが、これはハーバードに女性の入学が許されて6年目であり、500人の入学生のうち女子学生はたった9人でした。彼女は、大学でも有形無形の差別を受け、卒業後弁護士となることを望みましたが、「母親が弁護士になったら、だれが子供を育てるのか」と言われて断念し、大学の教職に就きます。そして法廷闘争を通じて、女性差別と闘うようになります。
アメリカの法律には、「女性は家庭で」ということを前提とした女性差別の法律が多数ありました。これに対して、過去に何度も訴訟が行われましたが、ことごとく敗北してきました。こうした中で、ある男性が母の介護の費用に対する税の控除を求めましたが、法律では控除は女性にしか認められないことになっていました。この法律は、一見女性の権利を守っているように思われますが、実はこの法律の背景には「女性は家にいるべきもの」という前提があります。女性は家にいて介護を行う義務があるのだから、介護費用の控除が受けられる。しかし男性は外で働くべき者だから、家での介護に対する控除はみとめられない、ということです。
このケースは、原告が男性であること、しかも法律の条文が一見女性の権利を守っていかのるように見えることから、ギンズバーグは男女不平等を正すチャンスとして、この裁判の弁護を引き受けます。この種の裁判では、裁判官の論法は「100年以上続いてきた法律が間違いだというのか」というものでした。これに対して彼女は、社会が変化するなら法律も変化しなければ、国家が崩壊するという論法で戦い、結局彼女の主張は認められます。

その後も彼女は男女差別の撤廃のための戦いを続け、1993年にクリントン大統領により連邦最高裁判事に指名され、彼女はいまもその職にあります。


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