2018年9月22日土曜日

映画で「ベラミ」(モーパッサン)を観て


2005年にフランスでテレビ・ドラマとして制作されました。ベラミ=Bel-Amiとは「美しい()友達」という意味で、フランスの自然主義作家モーパッサンの同名の小説が映画化されたものです。
モーパッサンは写実主義の作家フローベールの弟子となり、ゾラなどと知り合い、自然主義へと傾斜していきます。この頃から、女性を主人公とした小説が登場するようになります。1855年に出版されたフローベールの「ボヴァリー夫人」は、退屈な男性と結婚し、不倫と高価な買い物で身を滅ぼします(「映画「ボヴァリー夫人」を観て」(http://sekaisi-syoyou.blogspot.jp/2017/07/blog-post.html))1883年に出版されたモーパッサンの「女の一生」は、さまざまな不幸に見舞われていく女性の一生を描いています。また、1928年に出版されたD.H.ロレンスの「チャタレイ夫人の恋人」(http://sekaisi-syoyou.blogspot.jp/2017/07/blog-post_15.html)は、女性の性欲と愛の問題を描いています。
 1885年に出版されたこの小説の主人公はジョルジュ・デュロアで、アルジェリア出兵から帰還したばかりで仕事がなかったのですが、親友で新聞社の編集長をしていたシャルル・フォレスティエの紹介で新聞社に入社します。彼は田舎者で、上流階級のことを何も知りませんでしたが、たまたまパーティーで出会った新聞社の社長の孫に気に入られ、彼女にベラミ=Bel-Amiと呼ばれ、それが彼の愛称となります。以後、彼は女性との関係を通じて出世の階段を上っていきます。その点では、スタンダールの「赤と黒」に似ているように思います(http://sekaisi-syoyou.blogspot.jp/2017/05/blog-post_20.html)
 まず編集長の妻と不倫し、彼女からジャーナリズムについての多く学び、編集長の死後彼女と結婚します。この間彼は有力者の妻クロティルドと不倫をし、社交界の情報を得ます。彼は言います。「君の世界で成功するこつが分かったよ。嘘を操り、自分の考えと逆のことをする。」その後社長の妻と不倫しますが、結局その娘シュザンヌと結婚し、栄達への道を歩んでいきます。
 この間に当時の第三共和政の腐敗、植民地と利権、ジャーナリズムの堕落、上流階級の欺瞞などが描き出されます。ジョルジュは、本質においては田舎者の実直さを維持していましたが、それとは別のものとして、上流階級で栄達するための手段を身に着け、この堕落した社会を見事に泳ぎわたっていきます。

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