L・Sスタブリアーノス著 猿谷要監訳 斎藤元一訳、1991年(原著1989年)
本書には、「環境・男女関係・戦争からみた世界史」というサブタイトルがついています。監訳の猿谷要氏は、アメリカ史を多様な側面から、大変分かりやすい言葉で解説してくれる歴史家です。以前ずいぶん同氏の著書を読み、多少大袈裟かなとも思いつつ、それでもいろいろ教えられました。今回、同氏が2011年に逝去されたことを知り、大変残念に思います。
本書の解説で、要氏は「大変な歴史書があらわれたものだ」と絶賛していますが、私が読んだ印象としては、とくに目新しいものは見つかりませんでした。もちろん25年も前に書かれた本ですから、当時としては斬新だったのかもしれませんが、今日読んで感銘を受けるという内容ではありませんでした。
本書の核心部分は、人類の歴史を、親族社会、貢納社会、資本主義社会の三つに区分している点ですが、これはマルクス主義の時代区分とどう違うのか、よく分かりませんでした。また、こうした時代の転換の要因として、いろいろ述べてはいますが、結局は人口増加にあるとしているように思いますが、確かに人口増加は大きな要因ですが、人口増加を自然に抑制している社会もあり、少し単純ずるような気がします。一方本書は、これら三つの段階をそれぞれに四つの「命綱」を当てはめ、人類の営みを解明しようとします。四つの命綱とは、エコロジー(自然と人類の関係)、性関係(人類のなかの男女の関係)、社会関係、戦争です。これも個々の内容に関しては、特に目新しいものはありませんでした。
ただ、一人の人間がこうした内容を体系的に書くことには、歴史を捉える一つの視点を提供するものとして意味があるように思います。とはいえ、幾分書き方が乱暴ではあります。例えば、「ヨーロッパ人と中国人との大きな違いは、その動機だった。利潤か死かという風潮が、ヨーロッパ人を大海原を越えて諸大陸に雄飛させた一方、中国人は、利潤に対する貪欲さを「あらゆる危険のなかで最悪のもの」として警告していた」などという対比の仕方は乱暴すぎます。ヨーロッパは下品で中国は上品、でもヨーロッパは勝ったと言っているようで、幾分うんざりしました。
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