2015年8月26日水曜日

變臉 この櫂に手をそえて

 1997年に中国で制作された映画で、年老いた大道芸人と少女との心温まる関係を描いています。舞台となっているのは、1920年代の四川省で、四川省といえば10年程前に辛亥革命の発端となる反乱が起こった場所ですが、ここではそんなことは全く関係がありません。
 大道芸人というのは、世界中どんな時代にも存在しますが、中国の大道芸は非常に多彩なようです。以前、中国の大道芸について書いた本を読んだのですが、例えば蟻に芸をさせる(芸をしているように見せる)大道芸人などがいたそうです。こうした芸の多くは消滅し、一部は今日まで伝えられています。この映画の主人公である王(ワン)は、船で生活し、船で長江流域の町々を訪れ、「変面」という芸を行って暮らしていました。
 ところで、タイトルの「臉」という字は大変難しい字で、中国では「顔」という意味だそうです。この字は本来「れん」と読みますが、日本語版では「へんめん=変面」と意訳しており、この方が分かりやすいので、ここでも「変面」と書くことにします。これは瞬時にして顔を変える芸で、いわば百面相のような芸です。彼の技術は相当高度なもので、この地方ではかなり有名でしたが、彼には芸を伝える後継者がいませんでした。中国では、芸人の芸は親から子へ、子から孫へと、男子にのみ伝えられる習わしでした。彼にも男の子がいましたが、幼くして病死してしまい、もはや自分の子に芸を伝えることは不可能でした。
 そこで彼は、人買いから8歳の男の子を買い、これを後継者にすることにしました。もちろん人買いは違法ですが、当時はかなり幅広く行われており、そのための誘拐事件も頻発していました。この子は狗娃(クーワー)といい、大変賢い子で、ワンによくなつき、ワンもクーワーをとても可愛がりました。ところがある時、クーワーが女の子であることが判明し、激怒したワンはクーワーを追い出そうとします。これに対してクーワーは言います。自分は7回買われ、女であるため7回酷い扱いを受けたこと、そして今回初めて優しくされたこと、そして自分をここに置いて欲しいと懇願します。そこでワンは、彼女を召使としておいてやることにしました。
 クーワーは召使として一生懸命働き、ワンに献身的に仕えますが、ワンが留守の時に、ちょっとしたミスから船に火が付き、船が燃えてしまいました。もはやクーワーはワンのもとに帰れず、一人で町を彷徨います。一方、同じころワンは誘拐犯人と間違えられて逮捕され、冤罪で処刑されることになってしまいました。これを知ったクーワーは、自分の命をかけてワンを助けようとします。この間にいろいろあって、結局ワンは釈放されます。そして最後に、ワンとクーワーは二人で櫂を漕いで、新しい旅立ちをします。

 この映画は、大変感動的で、多くの賞を受賞しました。私が観たときには、まだVHS版しかなかったのですが、現在ではDVD版も販売されているようです。

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