山口博著 講談社現代新書 1994年
貴族という階級は、時代により、地域により微妙に異なり、われわれもかなり曖昧に貴族という表現を用います。日本の古代においては、本書によれば柔軟に考えても五位以上だそうで、150名から200名くらいだそうです。これらを含めて、いわば行政職の総定員は1万3000人ほどだそうで、彼らが官僚機構を形成するわけです。
本書が大変興味深いのは、こうした官僚機構に生きる人々を、現在のサラリーマンと比較して述べている点です。例えば、五位以上をホワイトカラー、それ以下をブルーカラと呼ぶ、といった具合です。こうした比較が適切なのかどうかは分かりません。多分誤解を招く危険性があるのではないかと思います。しかし、私のような素人にとっては、誤解であっても、とりあえず分かりやすいということは大切です。本書では官僚たちが出世するための方法について、さまざまな例を挙げ、また今日のサラリーマンと比較しつつ、王朝官僚ピラミッドの在り方が説明されています。
王朝官僚が、今日のサラリーマン同様に、いかに苦労しているかが具体的に述べられます。また、「同情すべきは現在のサラリーマンかもしれない。なぜなら、当時の役人は国家に直接奉仕しているので所得税はゼロなのだから」「そのうえ、住むべき土地は国家から無償で与えられるから」とも述べます。
その他にも、経済問題、女性問題、不安など、さまざまな問題が具体的に取り上げられています。現在との安易な比較は避けたいと思いますが、それでもこの本を通じて、古代人の心が少しだけ分かったような気がします。
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