2019年12月21日土曜日

オーストラリア映画「ライオン」を観て

2016年のオーストラリア・アメリカ・イギリス合作の映画で、サルー・ブライアリー原作のノンフィクション本『25年目の「ただいま」 5歳で迷子になった僕と家族の物語』を映画化したものです。キャッチコピーは、「迷った距離1万キロ、探した時間25年、道案内はGoogle Earth」です。









インド中部のカンドワという小さな町に、5歳のサルーは母や兄妹と暮らしていました。貧しい暮らしでしたが、それでも家族で幸福に暮らしていました。たまたまサルーは駅に停車していた列車に乗り込んで遊んでいたところ、突然列車が動き始め、23日かけて東部のカルカッタ(コルタカ)まで行ってしまいます。1600キロも移動したわけです。カルカッタは人口2000万人の大都会であり、彼はたちまちストリート・チルドレンとなり、やがてボランティア団体に保護されます。インドでは、毎年8万人もの子供が行方不明になるそうでいすが、一部はこうしたボランティア団体に保護されます。そしてストリート・チルドレンを養子にしようという国際的なボランティア組織が存在し、この組織を通してサルーはオーストラリアのタスマニア島に養子として送られることになりました。
 オーストラリアについては、このブログの「「オーストラリア歴史物語」を読んで」(https://sekaisi-syoyou.blogspot.com/2018/11/blog-post_14.html)と「映画でオーストラリアを観て」(http://sekaisi-syoyou.blogspot.com/2014/10/blog-post_31.html)を参照して下さい。オーストラリアは移民の国であり、人口が少ないことから、移民を奨励してきましたが、白豪主義をとり、イギリスの孤児を強制的に連れてきたり、先住民の白人化を進めるといったおぞましい手段が採用されました。そして今日では、ストリート・チルドレンを積極的に受け入れたりしているようです。もちろん、ストリート・チルドレンを受け入れることは人道にかなったことかもしれませんが、たまたま道に迷ったインドの子を、はるばるオーストラリアまで連れていくことには、何か釈然としないものがあります。かつてオーストラリアが、イギリスから孤児を連れてきたのと、大差ないように思われます。
 サルーは、新しい両親のものとで、何不自由なく幸せに暮らします。しかし20年を過ぎたころから、少年時代の記憶が断片的によみがえり、精神的に不安定になります。そこで彼は、当時普及し始めたグーグル・アースを使って、自分の出身地を探そうとします。何しろヒントは、カルカッタより列車で23日の位置というだけですので、いくらグーグル・アースでも限界があります。しかし彼は記憶をたどり、衛星写真を使って記憶のある場所を探し、ついに故郷をつきとめます。2012年、ついに母と妹に再開し、さらに彼の育ての親とも合わせ、ハッピー・エンドとなります。最後に、サルーは自分の名前を間違って覚えていました。彼の本当の名はシェルウで、意味はライオンです。

 

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