2014年公開のジョージア・イギリス・フランス・ドイツの合作映画で、原題はThe Presidentです。映画の内容は、ある独裁国家でクーデタが起き、逃げ遅れた独裁者と小さな孫が逃げ惑うという物語で、特定の国が念頭に置かれているわけではありません。
当然、登場する独裁者も特定の国の独裁者ではなく、独裁者一般です。独裁者については、すでにチャップリンが映画「独裁者」で描いたように(「映画でヒトラーを観て」https://sekaisi-syoyou.blogspot.com/2014/02/blog-post_24.html)、「自分勝手で、残酷で、滑稽なまでに自己陶酔的」です。映画の一場面で、5歳の孫の目の前で、町全体の電気を自分の命令で付けたり消したりして、自分の力を誇示する幼稚さ、そしてそのことがいかなる結果を生むかを理解できない想像力の欠如。
孫とともに変装して逃げる独裁者、その過程で独裁者に対する民衆の恨みの声を至る所で聞こえます。独裁者は、自分がいかに恨まれているかを今さらながらに知りますが、だからといって後悔しているだけではなく、この危機を脱すればまた復権できると信じています。民衆の中にも、独裁者への復讐を叫ぶ者もいれば、復讐の連鎖を恐れる人もいます。そして結局、最悪の事態へと進行していきます。
アラブ騒乱におけるアラブ諸国の情勢
抗議運動・暴動などによる政権の打倒
持続する抗議運動・暴動による政府の変革
比較的小規模な抗議運動による政府の変革
武装反乱・事実上の内戦状態
大規模な抗議運動(上記該当国除く)
小規模な抗議運動(上記該当国除く)
アラブ世界以外への抗議運動の広がり
*ウイキペディア
始まりは、チュニジアで起きたアラブの春でした。若者の失業率が高く、政府に対する不満が高まり、若者たちがSNSを通して連絡し合い、大規模な反政府デモに発展しました。この運動は、たちまちアラブ各国に波及し、後に「アラブの春」と呼ばれるようになりました。この一連の騒動で、一部に長期独裁政権が倒されることもありましたが、結局独裁政権が復活したり、内乱が勃発したりして、今なおこの混乱から抜け出せない地域が多数あります。
映画は、こうした時代に倒された独裁者と孫の逃避行を描いており、長期間の独裁政治の傷跡がいかに深く、人々の恨みがいかに深いかを描いています。しかし、それにもかかわらず解決策が見出せません。欧米的な民主主義が絶対なのか、イスラーム原理主義が正しいのか、あるいは事前の策として独裁政治しかないのか。それとも、まったく異なる道があるのか。今のところ、解答を見出すことができません。
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