2017年1月18日水曜日

「纏足物語」を読んで

 岡本隆三著 1986年 東方書店
纏足(てんそく)とは、女性が幼児の時から足を緊縛して成長を止め、成長しても足の大きさを幼児の時のままにしておく風習で、足の親指以外の指を足底に折り曲げてしまうもので、まさに人体改造です。成長してからも纏足を維持するためには、常に縛っておかなければならないため、相当の苦痛を伴うようです。纏足が普及し始めたのは10世紀頃とされ、清朝が滅びる辛亥革命以後まで続いたそうですので、実に纏足は千年に亘って続けられたことになります。
本書によれば、この世にも奇怪な風習が広がった理由の一つは、朱子学が女性の貞操観念を強調したこと、そしてそれは異民族進出の際に、特に強調されたのだそうです。その結果、女性が外を出歩かないように、歩きにくい纏足が推奨されたということです。さらに、文化の問題があります。裸の女性は、欧米人なら恥部を隠し、アラブの女性は顔を隠し、中国の女性は足を隠し、サモアの女性はヘソを隠すそうです。羞恥心の問題は文化の問題であり、また女性がどの部分に羞恥心をもつかは、男性がどの部分に関心をもつかということでもあります。しかし、中国の男性が、何故女性の足に魅力を感じるのか、理由が分かりません。
本書は、このことを説明するために、中国における数千年に及ぶ男女関係の歴史を縷々と説いており、それ自体大変面白い内容でしたが、それでも纏足が行われる理由としては、納得できませんでした。纏足が一時的な流行なら理解できますが、千年も続いたとなると、容易には理解できません。もっとも、欧米人に流行したハイヒールも纏足と似たような側面があり、ハイヒールも纏足も血流を悪くするため健康上問題がありますが、それが分かっていても続けるのですから、男女の心の機微は理屈では理解できないのかもしれません。



馮驥才(ふうきさい)著、納村公子訳、亜紀書房、1988
 実は、私はこの本を読んでいません。歴史書に関しては、知っている部分を飛ばして読むことができるのですが、小説はそういう分けにはいかず、最近は小説を読む気力がありません。読んでもいないのに「読書感想記」を書くのもどうかと思いますが、内容が面白そうなので、少しだけ紹介したいと思います。まず、タイトルの「三寸金蓮」ですが、足の小さい美女が金の蓮の上を歩いたという故事に因むもので、纏足をすると足が3寸、つまり足が10センチ程度になるということで、したがって「三寸金蓮」とは纏足という意味です。
 清朝は満州人が支配する王朝であるため、当初は纏足が禁止されたのですが、やがて満州人の女性も皆纏足するようになります。しかし清末から民国初期の混乱時代に、纏足を止めたり復活させたり、行きつ戻りつが繰り返されます。つまり人々は、纏足という呪縛から容易に解放されませんでした。それは文化大革命時代に、情勢の変化で右往左往する人々に似ています。

「民族が、直面する問題を解決するときには、勇気とともに冷静さが必要です。覚めた目で現実を見、勇気と冷静さをもって自分自身に立ち向かう。冷静さを欠く自己反省では、真実自分を知ることはできませんし、真実の向上はりません。これが私がこの作品を書いた根本的姿勢です」、と著者自身が述べています。



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