1964年にイギリスで制作された映画で、1世紀半ばのローマ帝国支配下の属州ブリタニアでの反乱を描いています。日本語版の「虐殺の女王」というタイトルはひどすぎますが、英語版のタイトル「The Viking Queen」というのも、よく分かりません。歴史上、ヴァイキングが登場するのは9世紀頃であり、この時代にはヴァイキングは存在しません。この映画の物語は、まったくの創作か、あるいはヴァイキング時代に生み出された伝説なのかもしれません。
紀元前1世紀半ばに、カエサルがブリテン島に進出し、それから100年ほどたった1世紀半ばにローマ帝国の属州ブリタニアが形成されます。この時代のイギリスでは、ケルト人の社会が形成されており、彼らは部族単位で各地に居住し、まだ国家を形成してはいませんでした。この頃のブリタニアのケルト社会についてはよく分かっていないようですが、ケルト人特有のドルイドと呼ばれる祭司階級が大きな力をもっており、映画でもドルイドがローマ支配に反発し、人々を扇動していました。ローマ支配時代のブリタニアは総じて平和でしたが、それでもしばしば各地で反乱が起きていました。映画は、そうした反乱の一つを描いています。
映画は、ある部族の女王とローマの総督が恋をし、部族とローマとの和平を誓い合いますが、部族の中ではドルイドを中心にローマ支配に反発する勢力があり、ローマ軍の中にも強圧的な支配を望む者もいました。こうしたことを背景に、色々あって、結局女王はローマ軍と戦って死んでいく、という話です。ありきたりのパターンで、大して面白くもない映画でしたが、ローマ支配時代のブリタニアの情勢について、多少のイメージをもつことができました。
この映画での出来事が事実であったのか、あるいは伝承として伝えられているのかについて、私は何も知りません。ただ、こうした反乱は、各地でしばしば起こっており、こうした事件が伝承として人々の間に残され、やがてそこからアーサー王の伝承が生れてくるのだと思います。アーサー王については、このブログの「映画で西欧中世を観て キング・アーサー」(http://sekaisi-syoyou.blogspot.jp/2015/06/1.html)を参照して下さい。
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