ジャン・ポール・アロン編(1980年)、片岡幸男監訳(1984年)、新評論
本書は、サブタイトルにもあるように、「19世紀フランス女性の栄光と悲惨」を描き出したものです。本書は10人ほどの研究者の論文を集めたもので、編者自身は、かつて誰も扱ったことがない「娼婦の歴史」を著して脚光を集めた人物です。本書が扱っている内容は多岐にわたり、女中、娼婦、女工、モード、主婦、農村の女、女流作家などで、それぞれが大変興味深い内容です。
女性の地位は、むしろ19世紀になって低くなっていったとされます。実際に低くなったかどうかは別として、少なくとも19世紀以前の女性の方が自由に活動できたとされます。その背景には、ブルジョワ社会や国民国家が成立し、家族を核とする社会が形成されていったからだとされます。すでにルソーは、「女は男に好かれるために作られている……男は強いというだけで好かれる」と述べています。また、このブログの「母親の社会史」(http://sekaisi-syoyou.blogspot.jp/2014/01/blog-post_3769.html)でも触れましたが、ルソーは「母性本能」という言葉を用い、女性を動物と同等に扱っています。そして決定的だったのはナポレオン法典で、「夫は、その妻の保護義務を負い、妻は、その夫に服従義務を負う」と定められました。こうして女性は男性に従属するものという考えが定着していきます。以前、何かの本で読んだのですが、日本でも、江戸時代の女性は明治以降の女性より自由だったそうで、日本でも明治以降、女性は家に閉じ込められるようになったとされます。
本書は、こうした社会状況における女性たちの生き様を、さまざまな角度から描いています。人類の半分は女性なのですから、女性の歴史、しかも特別な女性ではなく、普通の女性の歴史を知らなければ、本当の歴史を学んだことにはならないのだと思います
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