2016年11月5日土曜日

映画「国家の密謀」を観て

2009年にフランスで制作されたミステリー映画で、フランスによるコンゴへの武器密輸を背景として起きたさまざまな事件を、一人の女性刑事が追うという話です。
映画で扱われていることは、あくまでもフィクションですが、それでも色々考えさせられる映画でした。まず、アフリカの問題です。中南米がアメリカの勢力圏であるように、アフリカはヨーロッパの勢力圏であり、ヨーロッパの経済はアフリカからの搾取から成り立っています。第二次世界大戦後、アフリカ諸国の独立が不可避となっている中で、ヨーロッパ諸国はアフリカの植民地に宗主国に忠実な人物を育成し、彼らに権力を握らせて宗主国の利権を守ろうとしました。こうして独立を達成した国は、民主主義を守る国として国際社会の一員と認められたのです。しかし、実際にはそうした国は宗主国の利権を守る国であり、現在でも欧米はアフリカや中東の諸国に民主的な政権を求めますが、独裁国家の典型であるサウジアラビア王国に民主主義を求めることはありません。むしろ欧米は、サウジアラビア王国に高価な武器を大量に輸出しています。こうした欧米寄りの政権に対する反発が、アフリカや中東のの混乱の原因の一つとなっています。なお、現代のアフリカについては、「入試にでる現代史 第8章 アフリカ」(http://sekaisi-syoyou.blogspot.jp/2014/06/8.html)を参照して下さい。
ところで、世界中で起きている紛争に際して、当事者たちが使用している武器はどのように調達しているのでしょうか。アフリカなどの紛争地域で武器が製造されているとは、思われません。これらの武器の多くは、欧米や中国で製造されたものと思われます。欧米や中国の政府は、これらの武器を支持する勢力に直接売却することもありますが、同時に、第三国を通じて売却したり、「死の商人」と呼ばれる武器商人を通じて売却されます。欧米は、一方で紛争を仲介するとともに、もう一方で武器を売却しているのです。そして世界での武器輸出国の上位6カ国は、ドイツを除いてすべて国際連合の安全保障理事会常任理事国です。
この映画の武器密輸の舞台となったコンゴについては、このブログの「映画でアフリカを観る ルムンバの叫び」(http://sekaisi-syoyou.blogspot.jp/2014/01/blog-post_7359.html)を参照し下さい。コンゴでは、コンゴ動乱後、1965年から1997年まで32年もの間、モブツ独裁政権が続きました。モブツの失脚後も内乱状態は続き、またエボラ出血熱が発症したりして、数百万人の人々が死亡したとされます。2007年に選挙で大統領が選ばれますが、相変わらず秩序は不安定で、こうした中で事件は起きました。当時コンゴに駐屯していたフランスの治安維持部隊の7人の兵士が、反政府組織に誘拐され、身代金として武器を渡すことを要求してきたのです。当時フランスでは大統領選挙が迫っていたため、大統領としては、何としても人質の解放を実現せねばなりませんでした。そこで、大統領は秘密組織を用いて武器を空輸したのですが、これがコンゴ政府に知られ、貨物機がコンゴに着く前にコンゴ政府によって爆破されてしまいます。こうした秘密工作の過程で、何軒かの殺人事件が発生し、それを女性刑事が追う、というのが、この映画のストーリーです。

 映画で述べられていることはフィクションですが、こうした秘密工作は実際にしばしば行われているのではないかと思います。ヨーロッパ諸国とアフリカとの関係は、切っても切れない関係にあるからです。

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