2016年5月14日土曜日

映画「副王家の一族」を観て

2007年にイタリアで制作された映画で、19世紀のシチリアの貴族の生活を描いています。類似の映画に「山猫」という映画がありますが、私は観ていません。
シチリアは、地中海のほぼ真ん中にあり、3000年来多くの勢力の支配を受けてきました。そのため、その歴史は極めて複雑ですので、ここでは、直接映画に関係する範囲内のみで述べることにします。シチリアと南イタリア(ナポリ王国)は、18世紀以来スペイン・ブルボン家の支配下に入り、両シチリア王国と呼ばれました。これによって、ブルボン家の国王が両シチリア王国の国王となるのですが、その際スペイン国王の代理として副王が派遣されたのだと思います。この映画の副王家とは、この副王の子孫の一族だと思います。
この映画で登場する副王の子孫ウゼダ家が実在するかどうか知りませんが、当主ジャコモは暴君で、一族を厳しく支配し、多くの人に恨まれていました。そしてこの頃、イタリアの統一運動が盛んとなり、イタリアは大きく変わろうとしていました。1860年にガリバルディが率いる赤シャツ隊がシチリアとナポリに上陸し、両シチリア王国はイタリアに併合されることになります。このイタリア統一をきっかけに、北イタリアでは産業が急速に発展していきましたが、シチリアは何の恩恵も受けることなく、イタリアの発展から取り残され、貴族たちの生活は、ほとんど中世的と言えるほど保守的で、民衆は貧困に喘いでいました。この頃に、貧困に耐えかねた多くの民衆が、アメリカなどに移住していきました。
長男のコンサルヴォは家を出て政治家となり、民衆を基盤とした政党から立候補して議員となりますが、彼もしだいに父と似て独裁的となっていきます。父の信念は、その態度によって、憎悪と冷酷さが人間を前進させるのだと子供たちに教えていましたが、父を嫌っていた息子も、結局父と同じ道を歩むことになります。
そして最後に、191872歳になったコンサルヴォは、自分の一生を回顧して、結局何も変わらなかった、とつぶやきます。しかし、実は違っていました。この時代のイタリアは引き裂かれていました。労働運動、分離運動、地主・資本家などが、それぞれの要求を掲げていました。こうした中で、ムッソリーニがファシスタ党を結成し、急速に台頭してくることになります。

この映画は、何を言いたいのかよく分かりませんでした。ただ、保守的で、信じられない程因習が支配しているシチリアの社会を観た、という程度でした。

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