2020年5月9日土曜日

映画「レヴェナント 蘇りし者」を観て

















 
 
 2015年にアメリカで制作された映画で、19世紀前半における西部への体験を描いたものです。主人公のヒュー・グラスは実在の人物で、西部開拓史上における伝説的英雄です。



 アメリカの西部開拓は、いくつかの段階を経て進められます。まず、1783年に東部の13植民地が独立し、その際イギリスはミシシッピー川以東の土地をアメリカに割譲します。さらに1803年にフランスからアメリカはミシシッピー川以西のルイジアナを獲得し、今やアメリカは広大な未開拓の西部を手に入れることになりました。この広大な西部にまず入ったのは猟師で、彼らはビーバーなどの毛皮を取り、定期的に集まってくる商人に売って生計を立てていました。この時代が、この映画の舞台です。次に、猟師たちの情報によって住みやすい土地についての情報が入ると、農民がやってきて土地を耕し、家を建て、教会を建て、学校を建てて町が生まれ、それがさらに西部へ進出する拠点となります。そして本格的な西部開拓時代は、南北戦争が終わった1860年代からフロンティアが消滅する1890年代までで、かつて流行った西部劇も、この時代を背景としたものです。

 映画の舞台となったのは、ミシシッピー川の最大で支流であるミズーリ川で、この川はロッキー山脈を発し、4130キロ流れてミシシッピー川に流れ込み、その流域面積はアメリカ合衆国本土の6分の1に達するそうです。今日ではこの川には多数の水力発電所が建設され、世界恐慌時代にフランクリン・ローズヴェルト大統領のニューディール政策の一環として、この川は北アメリカ最大の貯水システムを形成しています。
 映画の発端は、1822年の新聞にアシュレー将軍の名で「毛皮貿易を目指しミズーリ川を船でさかのぼる探検隊の参加者100名公募」という募集広告が出されたことです。これはアシュレーなどが創設したロッキー山脈毛皮会社の仕事を請け負う罠猟師を集めるためで、この会社は1822年から1825年にわたり当時の北アメリカ西部の未開地でなんどか大掛かりな罠猟をしています。主人公のヒュー・グラスについては伝説が多く、探検隊に参加する以前には海賊だったとか、先住民(インディアン)の女性と結婚したとか、いろいろな説がありますが、事実かどうかは分かりません。
 グラスは1823年にこの探検隊に参加しますが、途中でクマに襲われて瀕死の重傷を負い、仲間たちから見捨てられます。ところがグラスはしぶとく生き残り、重傷を負っているにもかかわらず、さまざまなサバイバル技術を駆使して、ミズーリ川沿いに320キロ、6週間かけて拠点にたどり着きます。死んだと思われていたグラスが戻ると、人々は彼を「蘇ったもの(reverant)」と呼びました。結局グラスは10年後に先住民によって殺害されますが、彼の物語は伝説となって伝えられ、それに鼓舞されて多くの人々が西部に向かって行きました。
 なお、グラスを演じたのはデカプリオですが、デカプリオといえば「タイタニック」で純粋な青年を演じた俳優です。その彼が、この映画では野獣のような逞しい猟師を演じていました。

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