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2015年にアメリカで制作された映画で、カトリックの神父による児童虐待の問題を扱っています。
カトリック教会は聖職者の結婚を禁じているため、神父の性欲が異常な方向に向かい、信者の児童に対する虐待が恒常化しています。今までにもこうした事件は何度か発覚してきましたが、いずれも単発的な事件として取り上げられていました。しかし2001年にボストンの日刊紙グローブ紙は、この問題がもっと構造的な問題を抱えていると考え、本格的な調査に乗り出すことを決定しました。それを扱ったのが、特集記事を扱うスポットライトという部署で、4人の記者と編集長が調査に当たります。
取材の過程で一番の問題は、カトリック教会を敵に回す危険があったことです。第一、ボストン・グローブ紙の定期購読者の50パーセント以上がカトリックでしたので、彼らの反発を買う可能性がありました。また、当然のことながら、加害者も被害者も口が重く、その上9.11同時多発テロが勃発して、取材を中断せざるをえませんでした。それでも地道に調査を続け、やがて驚くべき事実が明らかになります。
当時の調査で、ボストンだけで過去何十年の間に何十人もの神父が児童虐待を行ってきたことが明らかとなりました。しかもボストンを統括する枢機卿は、事実を知りながらもみ消し、問題となった神父は他の管区に移動されるだけで、その管区で虐待が再生産されていたのです。これはもはや個々の神父の問題ではなく、カトリック教会の構造的問題です。問題となった枢機卿は辞職しますが、ローマ教会に栄転します。つまりローマ教会もこの問題に真剣に取り組む意志はなかったのです。
このニュースが報道されると、全米で同様のケースが多数公表され、ボストンのケースは氷山の一角でしかないことが判明しました。さらに同様のケースは世界中で報告され、アメリカのケースでさえ氷山の一角でしかありませんでした。児童虐待については中南米でも多発していると考えられていますが、中南米ではカトリック教会が絶対的な力をもっているため、真相を十分解明できていません。
ジャーリズムは、時にはくだらないゴシップも報道しますが、同時に社会の不正を正す重大な報道を行うことがあります。こブログの「映画でアメリカを観る(7) 大統領の陰謀」(https://sekaisi-syoyou.blogspot.com/2015/02/7.html)
では、二人の若い記者がウォーターゲート事件の真相を暴きました。カトリック教会の虐待を暴いたスポットライトの記者たちは、カトリック教徒からの嫌がらせを予想していましたが、思ったほどひどい嫌がらせはなかったようです。どうやら、多くの人々が虐待について薄々感じていたようです。トランプ大統領のような人々は、自分に不都合なニュースをすべてフェイクニュースとして切り捨ててしまいますが、一方で真実を見抜き、それを報道し、それを受け入れる勇気ある人々もいます。そうすることが、社会の発展に不可欠だからです。2003年にスポットライトは、栄えあるピューリッツァー賞を受賞しました。
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