2019年11月20日水曜日

「殿様は明治をどう生きたのか」を読んで


河合敦著 2014年 洋泉社
 日本が明治維新を迎えた頃、日本には260以上の藩があり、当初は旧大名は知藩事として従来通り領地を統治しましたが、明治4年に廃藩置県が断行されました。その結果、旧大名たちはどうなったのか。従来、大名は前世紀の遺物として、その帰趨についてはあまり語られなかったように思いますので、本書を大変興味深く読みました。
 ただ本書で扱われているのは14人だけであり、どれも一般によく知られている人物であるとともに、しかも内容は個々の人物のエピソードが中心でした。もちろんそうしたエピソードにも関心を抱けるものはありましたが、私としては、明治におけるこうした殿様たちの類型を知りたかったと思います。また小藩の大名がどのようになっていったのか、それでも殿様は何とか生きていくことができたかも知れませんが、家臣たちはどのように生きていったのか、そういったことを知りたいと思います。
 元殿様たちの中には、故郷に農業や産業を興し、家臣たちが生きて行けていくのに努力した人もいたでしょう。また明治政府の役人として、明治政府の樹立に貢献したひともいたでしょう。一方、身を持ち崩し、家臣たちの世話をすることもなく消えていった殿様もいたでしょう。そうした人たちを類型化し、明治という時代の中に位置づけて欲しかったと思います。
 もっとも私が知らないだけで、こうした本は沢山出版されているのかもしれません。

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