2002年のアメリカとイギリスによる合作映画で、19世紀末、大英帝国が全盛期だった頃の若いイギリスの兵士たちを描いています。原作は20世紀初頭に書かれましたが、以後何度も映画化され、今回は実に七度目の映画化だそうです。なお、映画の舞台は、スーダンで起きたマフディー教徒の乱で、この反乱で一時イギリス軍は全滅し、将軍のゴードンが戦死します。この事件については、「映画でアフリカを観て(3) カーツーム」(https://sekaisi-syoyou.blogspot.com/2015/04/3.html)を参照して下さい。
映画は、イギリス軍の若い三人の将校たちの友情の物語です。彼らは固い友情で結ばれ、女王陛下のために世界中どこへでも行って戦おうと決意していました。そして、ついにスーダンへの派兵が決定されたのですが、主人公のハリーが突然除隊してしまいます。ハリーに何が起きたのか分かりませんでしたが、友人絶ちはハリーに臆病者を意味する白い羽根を送り、さらに彼の恋人も彼に白い羽根を送りました。その結果彼は友人と恋人を失ってしまいます。この時代のイギリスは世界の4分の1を支配して繁栄を謳歌し、女王陛下のために命を投げうって戦うことが当然とされた時代でしたから、友人や恋人たちの行為は当然だったといえます。
実は、ハリー自身が、自分がなぜこのような決断をしたのか、よく分かっていませんでした。もちろん、戦争が現実のものとなって恐怖感が強まったということもあったでしょう。しかし、ハリーにはそれよりもっと素朴な疑問がありました。それは、「女王陛下と不毛の砂漠に何の関係があるのか」ということです。それは、今日から見れば当然の疑問ですが、大英帝国全盛の当時にあっては、許されない疑問でした。彼は、自分は一体何者なのか、自分は何をすべきなのかを悩み抜きます。彼は、まず自分が臆病者でないことを証明する必要がありました。そのために彼は単身でスーダンに渡り、危機に陥っていた友人たちを救い出し、彼らに白い羽根を返し、恋人にも返します。
大英帝国は全盛期を迎えていたとはいえ、多くの矛盾を抱え、すでに衰退への道を歩みだしていました。やがて多くの人々が、ハリーが抱いたのと同じ疑問を抱くことになるでしょう。
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