2017年7月12日水曜日

「中国、1900年 義和団事件の光芒」読んで

三石善吉著 1996年 岩波新書
 本書は、19世紀末に中国で起きた義和団事件を、さまざまな角度から描き出しています。義和団事件については、このブログの「映画で中国清朝の滅亡を観て 北京の55日」(http://sekaisi-syoyou.blogspot.jp/2015/08/blog-post_15.html)、「「義和団 中国とヨーロッパ」を読んで」(http://sekaisi-syoyou.blogspot.jp/2016/04/blog-post_6.html)を参照してください。
 本書の特色は、中国を文化帝国と位置づけ、義和団運動を千年王国思想と関連付けている点です。まず、文化帝国に関して、中国という国家は、ヨーロッパの主権国家と比較して、儒学を核とする徳による統治が行われた国という考えで、これは「国」というよりは「文明」と呼んだ方がよいように思われます。それに対して、19世紀にヨーロッパで生まれた主権国家という考え方は、今日でこそ地球を覆っていますが、従来にないまったく新しい国家観です。そして、この二つの国家観が義和団事件において激突するわけです。
 千年王国思想というのは、本来ヘブライズムやキリスト教に由来するようで、義和団は反キリスト教を掲げてはいますが、千年王国思想というのはキリスト教の影響を受けたと思われます。ただ一般に、絶望的なまでに辛い社会にあっては、人々の間にいつか救済の時が来るという考えが生まれるのは自然なことで、中国の白蓮教や浄土教もそうした考えをもっており、それらは多分ゾロアスター教にルーツがあると思われますが、似たような思想はどこにでも生まれる可能性があると思います。
 本書は、義和団が生まれてくる背景を、中国の武術集団から当時の中国の社会に至るまで、さまざまな角度から描いており、大変興味深い内容でした。

ウッドハウス瑛子著、1989年、東洋経済新報社
 モリソンはオーストラリア生まれのイギリス人ジャーナリストで、日清戦争頃から中国で活動し、当時の極東情勢に関する多くのニュースをイギリスに送りました。そして義和団事件では北京で籠城し、当時の北京の様子を詳しく伝えました。前に述べた「中国、1900年」は義和団事件の内的要因を深く掘り下げた本でしたが、本書は列強の行動を、モリソンという人物を通して描いています。なお、モリソンは義和団事件における日本軍の活躍を大々的に報道したことで有名で、それがやがて日英同盟につながっていきます。
 内容的には、事件の推移の記述が細かすぎて、少しうんざりしました。





























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