T・パミエス著 1977年 川成洋・関哲行訳 1986年 れんが書房新社
本書には著者についての説明がないため、著者についてはよく分かりませんが、翻訳者の一人は、前の「「スペイン戦争 ジャック白井と国際旅団」を読む」(http://sekaisi-syoyou.blogspot.jp/2015/03/blog-post_25.html)の川成氏です。本書が出版されたのは、フランコの死後2年後ですので、フランコ独裁の時代に密かに資料を集めて、書かれたものと思われます。
フランコ軍の占領下では、両親が殺されたり、亡命して取り残された孤児が、虐待を受けます。特にイデオロギーが関わる戦争では、虐待は過酷となります。著者は、多くの資料や聞き取り調査により、当時の子供たちの実態を描き出しています。フランコ軍支配下から大量に難民の子弟が共和国占領地域に流入します。
「恐ろしいまでの憎悪が、あの子供たちの胸に息づいていた。」「目の当たりに体験した残虐行為によって、子供たちの神経はボロボロになっていた。彼らが不意に発する叫び声、嘔吐、反射神経の衰え、夜尿症、吃り、集中力の欠如、不眠症などはそれをしめすものである。」
もちろん、戦争での子供たちの苦しみは、どこにでも見受けられます。第二次世界大戦でドイツ軍に占領された時のフランスでは、前に観た「映画でヒトラーを観て 禁じられた遊び」(http://sekaisi-syoyou.blogspot.jp/2014/02/blog-post_24.html)で両親を失った少女の心の歪みが描かれていました。さらに日本の戦後孤児となった子供たちも、悲惨でした。ただ、スペインの場合イデオロギー的対立と内戦であったことから、子供たちの心はボロボロに引き裂かれてしまいます。子供たちの遊びにおいては、「裏切り者」とか「銃殺」といった言葉が飛び交ったそうです。
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