2018年3月17日土曜日

映画「バトルフィールド」を観て

2015年にイギリスで制作された映画で、11世紀イギリスにおけるノルマンコンクェストを題材としています。

イングランドでは、9世紀以来サクソン人によるイングランド王国が存在していましたが、繰り返しノルマン人に侵入されており、11世紀には一時デンマークの支配を受け、独立して間もなく、ノルマンディー公に征服されます。話が少し遡りますが、10世紀にノルマン人が北フランスに侵入したため、西フランク王国が形式上彼らを国王の家臣とし、この土地を封土として与え、その結果ノルマンディー公国が成立しました。そしてノルマンディー公のウィリアム(フランスではギヨーム)が、イングランドの王位継承権を要求したのです。これは、もはやヴァイキングの侵略といったものではなく、王位継承を巡る諸侯間の争いです。

 1066年にウィリアムはヘイスティングズの戦いで、激戦の末イングランド軍を破り、ロンドンを制圧し、さらに北上します。その過程でサクソン人領主を追放し、フランスから連れてきた小貴族たちに領地を与えたため、領主層が大幅に入れ替わります。ただし入れ替わったのは領主のみであって、農民が入れ替わったわけではありませんが、フランス人領主の圧政に対して、各地で反乱が起きます。この映画は、そうした反乱の一つを描いていますが、史実とは関りがないようです。邦題の「バトルフィールド」というのはヘイスティングズの戦いのことですが、この映画の時代はこの戦いの後です。この映画の原題は「復讐の剣」です。
 映画の主人公はシャドウ・ウォーカーという気取った名前で、もしかすると日本の忍者をイメージしているのかもしれません。彼はノルマンディーの貴族で、父を叔父に殺され、その復讐に燃えていました。その叔父というのがデュラント伯爵で、サクソン人を征服し、圧政を行っている人物で、民衆の怨嗟の的となっていました。そこでシャドウ・ウォーカーはサクソン人と結んでデュラントを倒すという話ですが、もったいぶった映像の割には内容のない映画でした。ここで仮にデュラント一人を殺しても、結局はサクソン人貴族は滅びるし、以後イングランドはノルマン朝・プランタジネット朝を通じて300年以上フランス貴族を王に戴くことになります。

 この映画は、最低の映画を選んで表彰するラジー賞が授与されたそうです。もちろんラジー賞自体がユーモアであり、本当につまらないB級映画はいくらでもありますが、この映画の場合、前評判の割に期待外れだったことによる受賞だったような気がします。

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