カレン・アームストロング著、1993年、高尾利数訳、柏書房(1995年)
壮大なタイトルの本で、500ページを超える大著です。サブタイトルは、原題では「アブラハムから現代まで 4千年にたる神の探求」で、日本語版では「ユダヤ・キリスト・イスラーム教全史」となっていますが、同じことです。著者は、7年間カトリック系の女子修道院で神に仕えましたが、修道院で教えられることに疑問を抱くようになり、女子修道院を出て、さまざまな宗教を研究するようになります。
とはいっても、彼女の関心の対象は唯一神教、つまりユダヤ教、キリスト教、イスラーム教です。本書によれば、人類の宗教は太古にはほとんど唯一神教でしたが、唯一神は人々からあまりに遠くなりすぎて、人々に身近な様々な神が生まれたとのことです。インドでもブラフマンという至高の神がいますが、人々から遠くなりすぎて、多くの神々が生まれたそうです。ただ、インドの宗教で大変興味深いのは、宗教的な修行を積んで悟りを開いた人(ブッダ)は、神々を超えた位置にあるということです。仏陀は決して神々を否定しませんでしたが、彼の教えの中では、必ずしも神々は必要なかったようです。
それに対して上記三つの宗教は唯一神教を3千年以上にわたって維持しますが、本書の目的は、そこにおける「神」とは何かという神学的な問題ではなく、それぞれの時代に人間によって信じられてきた神の姿を描くということです。そして結局彼女の結論は、彼女が7年間仕え、今も捨てきれない「神」の相対化であるように思います。
私は、これらの宗教に関する本を相当たくさん読んできましたので、本書に書かれていることの多くは概ね知っていることでした。それでも、これだけの大作を読み通すのは大変でしたが、一読の価値のある本です。特に私が興味をもったのは、唯一神教とヒンドゥー教・仏教との比較で、この比較を通して唯一神教の特徴を際立たせています。
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