2017年3月29日水曜日

「フットボールの社会史」を読んで

F.P.マグーン、Jr.著、忍足欣四郎訳、岩波新書、1985
 本書は、1938年出版されたもので、1966年に復刻されたものです。また著者は英文学者であり、英文学研究の傍らで、フットボールに関する資料を集め、本書を執筆しました。したがって、本書に書かれていることが、どこまで正しいのか分かりませんが、私にとっては、面白ければそれでよい、ということです。
 いわゆる蹴球(しゅうきゅう)と呼ばれるボールを蹴って遊ぶ競技は、古くから世界中の多くの地域で親しまれ、日本でも中国から伝わった蹴鞠(けまり・しゅうきく)という遊びがありました。ヨーロッパでは何時頃フットボールが始まったのかについて、本書は多くの断片的な資料を駆使して、フットボールの痕跡を探しますが、イギリスに関しては13世紀以前には遡れないようです。
 フットボールは農民や都市の労働者の遊びで、貴族たちからは下品な遊びと考えられていました。何しろ、数百人の男たちが、ボールを追って村中・町中を駆け回り、時には川に飛び込んでボールを追い、乱闘あり、破壊ありの、相当過激な競技だったようで、死者が出ることもあったようです。そのため、権力者はしばしばこれを禁止しますが、一向に効果がなかったようです。また、何時の頃からか、キリスト教の祭日である告解の火曜日に競技が行われるようになったようです。
 「告解火曜日の蹴球は異教的儀式ないし慣習の幾分衰えた名残であろうか、それとも比較的近代になって普通の競技が祝祭日に移された一事例にすぎないのだろうか。少なくとも世界の二、三の地域では蹴球は紛れもなく儀式的なものであり、われわれの知る限り、ブリテン島で蹴られた最初の蹴球ボールは戦いに敗れた領主の生首であったかも知れない。これらの有史以前の蹴球ボールの一つが、多産性を賦与する太陽を象徴ていたかも知れないとか、この競技がかつては峻烈を極めた部族間の抗争を表わしていたかも知れないとかいう可能性を否定したくても、否定することはできない。だが、このことが証明可能だとしても、それは、普通の民衆的な蹴球や今でもイングランドで行われている告解火曜日の競技の起源にごくわずかな開明の光を投げかけることにしかならないだろう。その理由は正にこうだ―有史以前ないしは異教的過去と、今ここで検討している初めて記録に現れる蹴球技との連続性を示す証拠は何もないのである。」

 要するにはっきり分からないということですが、いずれにしても、19世紀後半のイギリスで少しずつゲームのルールが形成されるようになり、やがてそこからサッカーやラグビーが生れてくることになります。

0 件のコメント:

コメントを投稿