2020年7月24日金曜日

「キューバ現代史」を読んで


 後藤政子著 2016年 明石書店
 キューバ現代史といえば、カストロの歴史そのものであり、彼は本書が出版された2016年に死亡しました。私たちの世代にとってカストロは、毛沢東やホー・チ・ミンなどともに英雄でしたが、彼らの実像が明らかになるにつれ、その英雄像は色あせていきました。そうした中で、カストロは半世紀以上カリスマ性を維持した稀有な例のように思われます。
 カストロについての評価は大きく分かれます。カストロを英雄視し崇拝する人々から、カストロを嫌悪し激しく非難する人まで多様で、両極端の人々の多くは政治的立場に左右されていると思います。本書は、客観的にカストロを描いていますが、それでも幾分カストロに好意的に描いているように思われます。この点については私も同様ですが、私の場合はたいした根拠はなく、青春時代の感覚を引きずっているだけです。
 キューバは、アメリカの裏庭とまでいわれたカリブ海の小国であり、アメリカによって厳しい経済制裁を受け続けながら、なお生き延びているということは、驚くべきことのように思われます。キューバにとっての保護者ともいうべきソ連の崩壊は厳しい試練でした。しかしキューバは中国と接近することで、苦境を乗り切ります。アメリカにとって、アメリカの独壇場ともいうべき中南米に中国が入り込むことは不愉快でしたが、多極化する世界情勢には逆らえず、オバマ大統領の時、アメリカはキューバと国交を回復します。こうしてキューバに新しい時代が訪れるかに思われ、また同時に貧富の差の拡大が深刻な問題となることが予想され、本書はここで終わっています。しかしトランプ大統領は、再びキューバに厳しい態度をとるようになります。オバマ大統領による国交回復は英断でしたが、アメリカ国民にはキューバに対する根強い反感がありますので、今後アメリカとキューバの関係がどのようになるのか、私には予測できません。


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