2020年7月2日木曜日

映画「マルクス・エンゲルス」を観て


2017年にフランス・ドイツ・ベルギーの合作で制作された映画で、原題は「若きマルクス」ですが、二人は一心同体となって活躍しますので、このタイトルでも構わないと思います。ただ、2018年は、マルクス生誕200周年なので、やはりこの映画は、マルクスのための映画だったというべきでしょう。
それにしても、「マルクス・エンゲルス」という言葉は、私の世代には未だに特別な響きをもっています。私が歴史を学び始めた頃、まずマルクス主義を学び、それ以降はひたすらマルクス主義の克服と否定に努め、その過程は現在まで続いているのかもしれません。私には、マルクスは巨大な岩のようにのしかかっていますが、映画では若い時代のマルクスの日常生活が描かれており、これを観てマルクスについて幾分親しみをもてるようになりました。
マルクスの妻イェニーは、ドイツきっての名門貴族の娘でしたが、1843年に周囲の反対を押し切って、マルクスと結婚します。彼女はマルクスより4歳年上でしたが、以後10年余りの間に6人の子供を産み、貧困の中でも幸せな家庭を築きます。一方マルクスは、思想弾圧によりプロイセンから追放され、1844年にパリに亡命、その後もベルギー、ロンドンへと亡命を重ねますが、この間にも革命の情熱に燃え、意気軒高でした。
エンゲルスの父は、マンチェスターの織物工場を経営する中産階級であり、産業革命の申し子というべき典型的なブルジョワでした。彼はいつも父と対立し、父が経営する工場の女工と事実上結婚し、労働者の集会にもよく参加していましたが、労働者からは変なブルジョワと見られていました。彼は、父の仕事の手伝いでヨーロッパに出張していましたが、その途中、1844年にパリを訪れ、マルクスを訪問しました。マルクスが26歳、エンゲルスが24歳の時でした。初めて出会った二人の人物が、これ程意気投合できるものなのかと思うほど、二人は意気投合し、二人の友情は生涯続くことになります。
1847年に正義者同盟という秘密結社にマルクスとエンゲルスが参加し、映画によれば二人が正義者同盟を乗っ取って共産主義者同盟と改名し、その綱領を書くことになりました。これが有名な「共産党宣言」です。映画では、マルクスとエンゲルス、そして彼らの妻たちが激論を交わしながら原稿を書く場面が描かれており、大変興味深く観ることができました。「共産党宣言」は、21日に公表され、映画はここで終わります。
しかし激動の時代と彼らの本格的な活動は、ここから始まります。「共産党宣言」が出された2月にフランスで二月革命が起き、その影響でヨーロッパ各地で騒乱が起き、これをきっかけに歴史はブルジョワとプロレタリアとの対決に向かって行きます。そして20世紀にはソ連や中国にマルクス主義の巨大な国家が形成されることになります。

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