2020年7月19日日曜日

「大英帝国は大食らい」を読んで


リジー・コリンガム著 2017年 松本裕訳 河出書房出版 2019
 大英帝国が及ぼした影響については、今までに何冊もの本を紹介してきました。そして今回は、大英帝国と「食」についてです。世界にはさまざまな食文化が存在し、例えば中国内部だけでも、多様な食文化が存在するでしょう。そしてイギリスは、全世界に進出する過程で、多くの食文化を融合し、新しい食材、新しい料理を生み出しました。彼らは行く先々で食料を調達せねばなりませんが、見たこともないような食材や調理方法を学び、時には彼ら独自の調理方法を生み出します。さらにそれらの食材をまったく別の地域にもたらし、その地域独自の食材と組み合わせた料理が生み出されます。こうした行為は、初期には単に食料を調達するための手段でしかありませんでしたが、それらの食材や調理方法が、時には洗練されてコース料理に取り入れられ、テーブルの上に様々な地域の料理が並ぶことになります。すでに18世紀には、イギリスの貧しい労働者さえ、中国の茶にカリブ海の砂糖を入れて飲んでいました。本書では、こうして生まれてきた様々な料理のレシピが多数に記載されており、大変興味深い内容です。
 しかし、本書が本当に言いたいことは、イギリス人の「食」を求める行動の帝国主義的な意味です。食料を効率的に得るため、イギリス人は、大量の人間を移動させたり、動物や植物を地球的な規模で移動させたりしました。最悪なのは、伝統的に自給自足していた地域に単一の商品作物の栽培を強制したことです。これにより、自給自足体制が崩れて飢餓が発生し、食料を外国から輸入せねばならなくなります。イギリス人により商品作物が輸出され、食料が輸入される、商品作物を栽培せねば食料を買うこともできません。今や第三世界の人々の胃袋はイギリスの手に握られていることになります。アフリカのある政治指導者は次のように言いました。「帝国主義がどこにあるのか分からないというのか?……目の前の皿を見てみろ」と。

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