2019年1月16日水曜日

「王妃たちの朝鮮王朝」を読んで


尹貞蘭(ユン ジョンラン)著 2008年、金容権(キム ヨンゴォン)訳 2010年 
日本評論社
 李氏朝鮮は朱子学を国教としますので、女性の地位が低く、実際、政治の表舞台に女性が登場することはあまりありません。もちろん、このことは近代以前の社会においては、どこでも同じようなものですが、朝鮮の場合は少し極端だったようです。イスラーム世界でさえ、一時的に宗教的熱狂が吹き荒れた時期を除けば、女性はもっと自由でした。本書は、李氏朝鮮での抑圧された女性の姿を描いており、女性の恨み節やうめき声が聞こえてきそうですが、さすがに途中でうんざりして、後半は飛ばし読みになってしまいました。
いかし、男性中心社会だった朝鮮王朝でも、女性たちは色々な制約を乗り越えて、重要な役割を果たします。それを可能にしたのは、王位の後継者の任命権と垂簾聴政(すいれんちょうせい)の権限が女性に与えられていたということです。王が早世し、後継者がまだ決まっていなかった場合、残された王妃か先王の母が後継者を決定し、後継者が幼少の場合、彼女たちのどちらかが、王座の後ろの垂簾で政治を行う、つまり実権を握るということです。著者は、この制度こそが李氏の家門が500年以上維持された理由だと主張しますが、果たして制度だけで王朝が長期間維持されるものでしょうか。事実、李氏朝鮮末期に、この垂簾聴政こそが外戚の台頭と閔妃の専横を招き、それが李氏朝鮮の滅亡の原因となります。

では、李氏朝鮮が500年以上も続いた理由は何か。私は勉強不足のため、その答えを知りません。中国で王朝交替が起きるときは、社会が大きく変化し、旧来の王朝が、いわば「天命」に応えられなくなった時のように思います。李氏朝鮮では、私が知る範囲内で、社会の変化があまり認められません。貨幣経済も比較的未熟だったそうです。とは言っても、500年もの間社会の変化が起きないということは、想像できません。多分、私が知らないだけだと思います。朝鮮・韓国のような身近な国について、この程度のことさえとらなかった自分を恥ずかしく思います。

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