2014年2月13日木曜日

ローマ・カルタゴ百年戦争

 著者は塚原富衛で、昭和19年に出版された「ローマ・カルタゴ百年戦争史」を平成2年に再発行したものです。私がこの本を読んだ理由は、私が過去に買って、まだ読んでいない本を手当たり次第に読んでいる過程で、たまたま読んだというだけです。この本を何時どこで買ったのかもまったく覚えていません。でも、読んでいると、意外に面白くなってきました。また著者である塚原富衛という女性にも関心をもつようになりました。

 著者について、私はまったく知りませんでした。ネットで調べても、彼女の名前はほとんどでてきません。この本の解説によると、彼女は劇作家で、19歳の時に「西郷吉之助」という脚本を書き、岡本綺堂によって認められたそうです。戦後は、日本ユネスコ協会の創設に協力し、さらに東大学長茅誠司が提唱した「小さな親切」運動でも大きな役割を果たしたとのことです。昭和19年という、戦争末期に「ローマ・カルタゴ百年戦争史」が書かれたことと、戦後の彼女の社会活動とを考え合わせると、この本には、何か彼女の思いが込められているように感じます。

 この本は、多少講談調ではありますが、後に活躍する塩野七生を彷彿させます。非常に軽快な語り口で、読んでいて面白い。もちろん昭和19年という時代から考えて、また彼女が歴史家ではないということを考慮すれば、解釈や史実に誤りがあるであろうと思われます。この点では、塩野七生も同様で、彼女の場合、史実に誤りがあるだけでなく、話を面白くするために、でっち上げることがありますので、少したちが悪いと思います。

 この本のテーマであるローマ・カルタゴ百年戦争とは、ポエニ戦争のことです。紀元前264年から紀元前146年までの間に、ローマとカルタゴとがおよそ百年間、三回にわたって戦いました。それは、日清戦争以来の日中の対立のようでもあり、ドイツと英仏の対立のようでもあり、太平洋を挟んだ日米の対立のようでもあります。あまり単純な比較は許されませんが、少なくとも、当時の著者には、そのように思われたのではないでしょうか。

 この本では、国と国とがどのように対立し、どのようにして戦争が起き、戦争がどのように展開していくのかは描いています。それらの描写は、直接的ではありませんが、明治以降の一連の戦争や、当時戦っていた第二次世界大戦を思い起こさせるものでした。本書は、歴史書としては価値はないかもしれませんが、国と国との関係や戦争のあり方を、考えさせてくれる本でした。

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