2020年6月28日日曜日

映画「家へ帰ろう」を観て

2017年に制作されたスペイン・アルゼンチンの合作映画で、ナチスの迫害を逃れてアルゼンチンに移住したユダヤ人が、70年後に故郷のポーランドを訪問する、という話です。
 私がこの映画に興味をひかれたのは、まずアルゼンチンとユダヤ人という組み合わせです。アルゼンチンには、ペロンのようなポピュリスト政治家が現れ、それは民衆迎合的であると同時にファシズム的でもありました。そのため、ペロンもヒトラーやムッソリーニに親近感をもっていたようで、彼ら程ではありませんが、民衆による熱狂的な支持の裏で、反対者を過酷に弾圧していました。こうしたこともあって、アルゼンチンはアイヒマンをはじめナチスの残党の亡命を受け入れましたが、だからといってペロンをファシストと呼ぶこともできないし、また彼は、ユダヤ人の差別に対しては反対していました。
 アルゼンチンは、独立後の軍事独裁政権の時代にヨーロッパからの移民を多数受け入れます。一般に中南米への移民はスペイン系が多いのですが、アルゼンチンにはイタリア系やドイツ系やポーランドなど東欧系が多く、アルゼンチンは中南米ではヨーロッパ系が一番多いなどという時代錯誤的な自慢をしたりもしていました。そしてこの時代に、ポーランドなどから多くのユダヤ人が移住し、さらにナチスによる迫害の時代やナチス後に生き残ったユダヤ人が多数移住しました。
 この映画の主人公アブラハムは、ポーランドでナチスにより強制収容所に入れられ、目の前で両親と兄弟が殺されるのを目撃し、1945年にナチスが去った時、彼はからくも生き延びていましたが、屍同然でした。その彼を救ったのが、彼と同年配の少年で、アブラハムはいつか必ず会いに来ると約束してアルゼンチンに移住しました。その後70年、人生の終わりを迎えようとしていたアブラハムは、ポーランドの友人に会いに行く決意をします。この旅では、盗難にあったり、いろいろな人々との出会いがあったりして、その経過を幾分コミカルに描いており、大変面白く観ることかでできました。

 そしてアブラハムは、ポーランドの同じ町の同じ場所で、親友を見つけました。70年の歳月が流れていましたが、お互いに一目で相手を認めることができした。こうした経験は、おそらくアブラハムだけではなく、多くのユダヤ人が経験したことなのだろうと思います。

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