2020年4月4日土曜日

映画「ターザン」を観て



「ターザン:REBORN」(ターザン リボーン(再生)、原題: The Legend of Tarzan)は、2016年にアメリカで制作された映画です。「ターザン」はアメリカの小説家エドガー・ライス・バローズが、1912年から連載を始め、早くも1918年に映画化され、以後今日まで数えきれないほど映画化が行われています。ターザンのイメージは、1894年に出版された「ジャングルブック」の強い影響を受けており、ヨーロッパが全世界を植民地化しようとしていた時代のジャングルと文明というテーマが描かれています。「ジャングルブック」については、このブログの映画「ジャングル・ブック」を観て(https://sekaisi-syoyou.blogspot.com/2019/05/blog-post_22.html)を参照して下さい。
ターザンの父はイギリス貴族グレイストーク卿ジョン・クレイトンで、妻と赴任先の西アフリカに向かう途中船員の反乱に遭遇し、アフリカ西海岸に置き去りにされます。そこで1年後にターザンが生まれ、まもなく両親も死にますが、ターザンは類人猿(多分ゴリラのこと)によって育てられます。ターザンは育ての母がつけた名前で、「白い肌」を意味するそうです。成人後ターザンは、指紋鑑定によりグレイストーク卿ジョン・クレイトンの子であることが判明し、父の名と地位と財産を受け継ぎます。したがってターザンの正式名は、ジョン・クレイトンということになります。またターザンはジェーンというアメリカ人女性と結婚し、子供もおり、西アフリカで農場を経営して暮らすようになります。


 映画の舞台となるのは、コンゴ川流域です。コンゴ川はアフリカで2番目位の長さを誇り、その流域はアマゾン流域に匹敵する熱帯雨林が存在し、ここがターザンが育った場所と考えられます。アフリカ大陸について、あまりに自然条件が厳しいこともあって、かつてはヨーロッパ人は内陸に入り込むことはほとんどありませんでしたが、19世紀後半にスタンリーがコンゴ川流域を探検すると、ベルギー国王レオポルト2世はコンゴ川流域の植民地化を進め、1885年の国際会議では、この広大な地域がレオポルト2世の「私領」として認められました。この地域には独立など存在しませんでしたが、レオポルトはこれをコンゴ独立国と呼び、イギリスなどは自由などまったくないことを皮肉って「自由国」と呼びまた。
 コンゴについては、このブログの以下の項目を参照して下さい。
 映画でアフリカを観る 「ルムンバの叫び」
映画で観る二人の尼僧 尼僧物語
入試に出る現代史 第8章 アフリカ
 レオポルトがコンゴで行ったことは、2万人もの傭兵を雇い、先住民を捕らえて奴隷とし、彼らに宝石の採掘やゴムの採集をさせ、怠惰なものに対しては手首を切り落とすという蛮行を行っていました。映画では、アメリカの特使がこの蛮行を暴露するために、ジャングルに精通した元ターザンに案内を依頼することから始まります。穏やかな生活を送っていたジョン・クレイトンは、当初この要請を断りますが、いろいろあって、結局受け入れます。
 映画におけるターザンは、私の予想に反して、聡明で寡黙な人物でした。ジャングルには精通していましたが、決してゴリラ語やライオン語を話すわけではなく、彼らと心を通い合わせて意志の疎通を行っていました。また、当時の奴隷の集積場であったボマの港や、川を航行するために平底船が再現されており、大変興味深く観ることができました。
 結局ターザンは、ボマに集められた奴隷たちを先住民や動物たちの力を借りて救出し、映画は終わります。しかし、実はベルギーも含め欧米諸国によるアフリカ収奪は、これから本格的に始まります。ターザンはそのことを知ってか知らずか、ジャングルを去って再び穏やかな生活に戻っていきます。
 私は幼いころ父に連れられて初めて映画を見に行きました。映画の内容は、多分ターザンだったと思います。したがって、私が最初に観た映画は、ターザンだったことになります。私が観たターザンがどのバージョンだったかは分かりませんが、密林の中で叫ぶターザンの声を、今もはっきり覚えています。

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