2017年7月8日土曜日

映画「ボヴァリー夫人」を観て

2016年のアメリカ・ドイツ・ベルギーによる合作映画で、19世紀半ばのフランスの作家フローベールによる「ボヴァリー夫人」を映画化したものです。
 フローベールは、フランス西部の古都ルーアンで富裕な医師の子として生まれましたが、しばしば癲癇の発作に見舞われたこともあって、文学に傾倒していくようになります。彼は当初ロマン主義に憧れ、「ロマン主義的な陶酔や大げさな文章」を書いていましたが、1851年から4年半かけて「ボヴァリー夫人」を執筆します。本書は公衆道徳に反するとして訴えられますが、無罪となり、これによって却って彼の名声は高まり、作家としての不動の地位を確立します。彼は、執筆にあたって多くの資料を読み込み、徹底的に文体を推敲するため、あまり多くの作品を残しませんでしたが、ロマン主義から写実主義への転換に大きな役割を果たしました。
 物語の舞台は、フローベールが生まれたルーアンです。農夫の娘エマは修道院で育ちましたが、小説や物語を読みロマンティックな空想に浸るのが好きでした。やがてエマはシャルル・ボヴァリーという医師と結婚し、娘を出産します。シャルルは、エマを愛していましたが、生真面目で凡庸な人物であり、彼女はしだいに彼との生活に退屈するようになります。そのため彼女は不倫を繰り返すようになり、さらに借金をして高価なものを買い続けます。結局彼女は破産し、恋人にも見捨てられ、毒薬を飲んで自殺します。彼女のロマンティックな夢は、現実とはかけ離れたものだったわけです。そして、これこそが、ロマン主義から抜け出して写実主義に向かうフローベールそのものだったのだのだと思います。

 この映画について、正直なところ幾分退屈でした。この作品は、映画ではなく原作を文字で読むべき作品ではないかと思います。そして、残念ながら私は原作を読んでいません。


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