2019年10月9日水曜日

「縄文人の植物利用」を読んで

工藤雄一郎/国立歴史民俗博物館編 新泉社 2014
 また縄文人に関する本を読んでしまいました。どうやら私も縄文人のファンになってしまったようです。ただし、縄文人に関する私の知識は、高校日本史の域を出ず、偏見の塊であり、今回も偏見を修正せざるを得ませんでした。
 一般に狩猟採取の民は食物を求めて移動を繰り返し、穀物栽培つまり農耕の開始によりより定住し、文明の時代に入るとされます。確かに縄文人は穀物栽培をしませんでしたが、定住し、衣料用のアサを栽培し、食用のダイズなどを栽培しました。しかも大豆は保存ができるため、穀物に匹敵する作物のように思います。さらクリやトチノキなどの樹木も栽培され、食用や建築資材として用いられ、またウルシも栽培され、漆の技術も相当発達していました。
 おそらく、ほとんどの人が何らかの偏見をもっており、偏見の多くは無知のため生まれるものですが、このような偏見を克服するには、絶えまない努力が必要です。偏見はごく日常的なことにも存在しますが、ここでの偏見は農耕=穀物=文明という、長く積み重ねられてきた偏見です。縄文人の文明は、もはやこのような偏見が通用しないことを示しています。また鉄器と文明の発展についても、古代アメリカ文明は鉄器なしでもあれ程の文明が発展しうることを示しています。中国は鉄器の普及がかなり遅れますが、その理由は青銅器の製造技術が極限状態にまで発展し、下手な鉄器より青銅器の方が優れていたからだそうです。
 あらゆる問題について、私たちは固定観念にとらわれないよう、不断の努力が必要だと思い知らされます。

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