2019年10月16日水曜日

「つくられた縄文時代」を読んで

山田康弘著 2015年 新潮選書
 「つくられた縄文時代」というタイトルに引かれて、また「縄文時代」を読んでしまいました。私はこの本のタイトルを見た時、縄文時代という時代概念はでっちあげで、縄文時代という時代は存在しないのだ、と主張しているのだと思い、この本に関心を抱いたのです。
 しかし本書の内容は、私の予想とはまったく異なっていました。本書の主張は、縄文時代という歴史概念は、基本的には戦後生まれたものであり、戦後新しい日本史を生みだしていく過程で、縄文時代の概念が育まれていった、というものです。それなら納得なのですが、ただ私たちが知っている歴史とは、すべてこういうものではないかとおもいます。われわれは様々な証拠をもとに歴史を再構成し、時にはまったく新しい歴史像を生み出すこともあります。その意味で、すべての歴史は「つくられた」ものといえるだろうと思います。例えば今日では、世界的に「近世」という言葉が用いられますが、それはかなり最近のことであり、それ以前には「近世人」なるものは存在しなかったと言えるでしょう。
 とはいえ、本書では縄文時代の研究史、縄文時代が「つくられる」過程が詳しく述べられており、私には大変参考となる内容でした。

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