2019年8月7日水曜日

「古都トレド 異教徒・異民族の共存の街」を読んで

芝修身著、2016年、昭和堂
 スペインは、8世紀初頭にイスラーム教勢力に征服されて以来、800年近くイスラーム教徒に支配されました。この時代のスペインとは一体何なのか、イスラーム教徒に屈服していた時代なのか、イスラーム教徒との雄々しい戦いの時代なのか、それとも共存の時代なのか、本書はいまだに解決を見ないこの問題を、トレドという都市に焦点を当てて論じています。なお中世のスペインについては、このブログの「炎のアンダルシア」「エル・シド」(https://sekaisi-syoyou.blogspot.com/2014/08/blog-post.html)を参照して下さい。
 トレドは、今日のスペインの首都マドリードより70キロほど南にある都市ですが、マドリードが16世紀に建設された都市であるのに対し、トレドははるかに古い都市です。トレドは、すでに西ゴート王国時代の首都がおかれ、8世紀にイスラーム教徒の支配下に置かれ、11世紀末に再びキリスト教徒により奪還され、以後トレドはキリスト教勢力とイスラーム教徒勢力の接点となります。当時のスペインには、イスラーム教徒やキリスト教徒のほか、ユダヤ教徒も多数おり、キリスト教徒もイスラーム教徒風の文化を受け入れ、日常的にアラビア語を話していたとされます。
 特にトレドは三つの宗教が日常的に混在しており、彼らは、少なくとも12世紀から13
世紀にかけての2世紀間は、何の問題もなく共存していたとされます。またトレドには翻訳所があり、多くのユダヤ人がギリシア哲学を含むアラビア語文献をラテン語に翻訳していました。したがってトレドは、キリスト教世界がイスラーム世界の先進文化を受け入れる窓口だったわけです。
 異文化・異宗教の共存は可能かという問いについては、少なくともトレドに関しては可能だったと言えるでしょう。そしてこの共存を破壊したのは、キリスト教徒の方でした。
 日本では、スペイン史、特にスペイン中世史に関する本は非常に少ないように思います。その意味で、本書は貴重な一冊といえると思います。

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