2019年8月17日土曜日

映画「少林寺」を観て

1982年に中国・香港で制作されたカンフー映画で、その後のカンフー映画の流行の出発点となりました。
舞台となる少林寺は洛陽の近くにあり、伝承によれば5世紀の北魏孝文帝時代に建立され、6世紀にはインドからの渡来僧達磨がここで禅の修行をしたそうです。また、7世紀に李世民が唐を建国するに際して、少林寺が兵を出して援助したことから、李世民によってその地位が確立されました。少林拳なるものがいつ頃生まれたかははっきりしませんが、少なくとも明の時代にはその訓練が行われていたようです。
20世紀は少林寺にとって苦難の時代となります。19世紀末に義和拳などの武闘集団が起こした義和団事件以来、少林拳は抑圧され、さらに文化大革命時代には少林拳のような前近代な憲法は禁止されました。1977年に文化大革命の終結宣言が行われると、少林拳も復活し、この映画は5年後の1982年に制作されました。主人公を演じたリー・リンチェイは、1963年に生まれ、中国全国武術大会に5年連続で優勝し、この映画に出演した時、また19歳でした。
映画の制作技術や俳優の演技はあまり洗練されていませんが、かえってその素朴さが新鮮に感じられました。長々と続く武闘シーンにはうんざりしますが、時々映し出される少林拳の型は、相当見ごたえがあります。スタントマンも編集もなしで、出演者が実際に演じていますので、今日流行のワイヤーアクションなど比較にならない程迫力がありました。これによって少林拳の名声は、世界に轟くことになりました。

なお、日本の少林寺拳法は少林拳とは直接関係がありません。少林寺拳法は、日本の武道家である宗道臣(中野理男)が、中国の拳法を学び、それに独自の工夫を加え、戦後日本で青少年の精神鍛錬のために生み出したものです。ウイキペディアは、少林寺拳法と少林拳は無関係であると断じていますが、宗道臣は滅びかかっていた少林寺で古典的な拳法を学び、自らの拳法を少林寺拳法と名乗っているのですから、無関係というのは言い過ぎのような気がします。

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