2019年5月22日水曜日

映画「ジャングル・ブック」を観て

2016年にアメリカで制作された映画で、イギリスのラドヤード・キップリングの短編小説集『ジャングル・ブック』(189495)を映画化したもので、過去にも何度も映画化されました。内容は子供向けの話ですが、大人が観ても十分に楽しく、久しぶりに童心にかえりました。
キップリングは1865年にインドのボンベイでイギリス人夫婦の子として生まれ、幼いころは召使の現地人が話す現地語の物語を聞いて夢を見、両親とは英語で話していたそうです。5歳の時教育のためイギリスに送られ、188216歳の時にインドに帰りますが、イギリスでの生活は決して楽しいものではなかったようです。インドでは多くの名所を旅し、多くの人々と交流し、その過程で文章を書きたいという欲求が高まったそうです。彼は22歳ころから詩や小説を書き始めるとともに、世界各地を旅行しました。
こうした中で、「ジャングル・ブック」は誕生しました。それは熱帯ジャングルに棲む動物たちの物語で、人間の子であるモウグリが狼に育てられていました。インドでは、人間の子が狼や猿によって育てられたという話が、しばしばあるそうです。一方、人間に恨みをもつ虎シア・カーンが、モウグリを殺そうとしますが、多くの動物に助けられて何度も危機を脱します。この過程でモウグリは、ジャングルで暮らすべきか、人間社会で暮らすべきか悩みます。原作では、結局モウグリは人間社会に戻り、人間の女性と結婚することになるそうですが、映画ではモウグリはジャングルで生きていくことになります。
 原作者のキップリングについては、人種差別・蔑視思想の持ち主でもあったと言われることもあり、また「ジャングル・ブック」は大英帝国の申し子と言われることもありますが、主人公はインド人の少年であり、動物の側にも人間の側にも帰属できずに悩む少年の孤独も描かれており、その後のこの種の小説に大きな影響を与えたのも確かでしょう。事実、1907年にキップリングは、史上最年少の41歳でノーベル文学賞を受賞しました。

 映画は、CGがとても美しく、大人が観ても十分楽しめる内容でした。

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