2019年5月11日土曜日

映画「草原の実験」を観て















2014年にロシアで制作された映画で、英語版のタイトルは“The Test”です。この映画は、100分近くありますが、台詞もナレーションも説明の字幕もまったくなく、美しい写真のような映像だけで、すべてが伝えられます。

舞台となったのはカザフスタンで、カザフスタンについては、このブログの映画「ダイダロス 希望の大地」を観て」(https://sekaisi-syoyou.blogspot.com/2017/09/blog-post_30.html)を参照して下さい。カザフスタンの国土の面積は世界の第9位ですが、国土の大部分は乾燥したステップ地帯です。そのステップにある一軒家に、ある父娘が住んでいました。父は毎日トラックに乗って、どこかに仕事に生きます。娘の年齢は不詳ですが、彼女を演じた女優は、当時14歳だったようです。彼女は毎日家事をこなし、父親の面倒を見るという、単調ですが穏やかな生活が続いていました。彼女はほとんど家を出たことがなく、家の周りの草原地帯しか知らず、その向こうに何があるのかも知りませんでした。そんな彼女に二人の少年が恋をし、彼女を巡って争っていました。そしてそのような生活は、一瞬にして消えました。
カザフスタンは、19世紀にはロシア領となり、1917年のロシア革命以後ソ連邦に編入され、1949年にカザフスタンの北東部のセミパラチンスクに、ソ連は核実験場建設しました。建設にあたって、この地区には居住者はいないという虚偽の報告がなされ、1949年から1989年までの40年間に、この地域で456回もの核実験が行われました。そして映画では、楽しそうにあやとりをして遊んでいた少年と少女の目の前で巨大なキノコ雲が発生し、次の瞬間にすべてが吹き飛ばされ、焼き尽くされました。

人間が造り出した悪魔の兵器である原爆のキノコ雲は、美しくさえありました。そして実験が終わった後には、大地は何にもなかったかのように、毎日美しい夕日に照らされます。広島や長崎で多くの犠牲者がでたにも関わらず、何もなかったかのように、日々が進んでいくのと同じです。

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