2019年3月20日水曜日

「近世大坂の町と人」を読んで

脇田修著 2015年 吉川弘文館
 近世の江戸については、テレビの時代劇などでしばしば見ることができます。特にテレビで「鬼平犯科帳」などを観ていると、江戸の町や風俗が詳しく描かれており、大変興味深く観ることができます。ところが、近世の大坂については江戸ほど手軽に触れることが難しいように思います。私は、大阪には以前仕事で頻繁に行っており、大変好きな町でしたが、本書は現在の大阪のルーツとなる近世大坂の姿を、いろいろな角度から見せてくれます。もちろん、近世大坂について書いた本は多数あると思いますが本書はたまたま私が図書館で借りた本ということです。
 大坂も江戸も、築城がきっかけで発展しました。巨大な城を建設するために、人と物が集まり、それがやがて巨大な都市へ発展しました。ただ江戸の場合、参勤のための大名屋敷があり、さらに旗本の屋敷などがあり、江戸の人口の半分くらいは武士であり、彼らは何も生産しません。さらに庶民も直接的にしろ間接的にしろ武士との関りで生活している者が多く、庶民の生活は武士の消費の上に成り立っていました。しかも関東は、巨大都市江戸を支える後背地としては未開拓で、江戸は必要な物資を大坂からの輸送に依存せねばなりませんでした。一方大阪の武士の数は人口の1パーセント程度で、しかも大阪には古くから築かれてきた広大な産業の後背地があります。
 ここに、政治都市として発展した江戸と、産業・商業都市として発展した大坂の構造的な違いがありますが、そうした違いを背景として、大坂の特色を多岐にわたって述べており、大変興味深い内容でした。

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