2019年3月16日土曜日

再び映画でアイヒマンを観て

アイヒマンを追え
2015年制作のドイツ映画で、ユダヤ人の検事フリッツ・バウアーが、アイヒマンの逮捕に執念を燃やすという、実話に基づいた話です。
アイヒマンについては、このブログの「映画でヒトラーを観て ヒトラーの審判 アイヒマン、最期の告白」「イェルサレムのアイヒマン」(https://sekaisi-syoyou.blogspot.com/2014/02/blog-post_24.html)を参照して下さい。アイヒマンは、ヨーロッパ中のユダヤ人を強制収容所に送った人物で、ドイツが敗戦すると、彼はいち早く海外に逃亡していました。戦後の一時期にはドイツでは元ナチス党員に対する風当たりが強かったのですが、1950年の後半ともなると、人々の関心は戦犯の逮捕より、経済復興に向けられ、政権内部にも元親衛隊の将校などが多数復帰していました。
フランクフルトの検事長だったフリッツ・バウアーはユダヤ人であり、ナチス政権時代に逮捕され、ナチス政権に従うと宣誓し、やがて国外に亡命します。帰国後フランクフルトの検事長となり、アイヒマンを逮捕することに執念を燃やしますが、政府内にはナチスのシンパが沢山おり、彼の行動を妨害します。バウアーは、ようやくアイヒマンがアルゼンチンにいることを突き止めますが、政府は行動を起こそうとしません。そこでバウアーは、イスラエルの諜報機関モサドに情報を提供し、その結果モサドが1960年にアイヒマンの身柄を拘束します。
バウアーとしては、政府内部にいる元ナチス高官やナチスのシンパに対して、絶対に許さないという警告を発するため、アイヒマンをドイツで裁いて処刑する必要があると考えていました。そのため政府にイスラエル政府に対してアイヒマンの身柄の引き渡しを要求することを求めましたが、政府はこれを拒否し、結局アイヒマンは1961年にイスラエルで裁かれ、翌年に処刑されました。映画はここで終わりますが、バウアーの戦いはまだ終わりません。

1963年から65年にかけてフランクフルトで、通称アウシュヴィッツ裁判と呼ばれる裁判が行われ、ニュルンベルク裁判で裁かれなかった人々が裁かれます。この裁判でバウアーはアウシュヴィッツで残虐行為を行った22名の人物を特定し、彼らを実名で起訴し、多くの証人を呼んでアウシュヴィッツで行われた残虐行為を暴いたのです。こうしてバウアーは、自らの信念を貫いたのです。「現在、歴史家はこの裁判を社会のターニング・ポイントだったと評価している。匿名だった民族虐殺の実行犯に初めて名前と顔がつき、この時から過去の検証が始まった。ドイツ人の歴史認識を変えたのは、勇気ある検事、裁判官、そして証言者たちだった。」(ウイキペディア)
アイヒマンの後継者
 2015年にアメリカで制作された映画で、誰もがアイヒマンになりうることを実証しようとした実在した心理学者ミルグラムの半生を描いています。
 アイヒマンの逮捕と裁判は世界中で大きな話題となり、彼が普通の人間であったことは、世界中の人々を驚愕させました。前にもふれましたが、ハンナ・アーレントは1963年に発表した裁判記録「イェルサレムのアイヒマン」に、「悪の陳腐さについての報告」という副題をつけました。こうした中で、1961年、イェール大学で社会心理学を研究していたユダヤ系アメリカ人であるスタンレー・ミルグラムは、なぜホロコーストが発生したのかを調べるために実験を行いました。
(ウイキペディア)
 この図におけるTは教師という設定で、別室のLは生徒、ELを監督する人という設定です。TLに質問をします。単に暗記したものを思い出させるだけの単調な質問です。Lが間違えると、TLに罰として電流を流します。15Vから始まり、間違えるたびに電流をあげ、Lは苦しみの声をあげます。Tは躊躇し、Eに止めたいと訴えますが、Eは「1.続行してください。2.この実験は、あなたに続行していただかなくてはいけません。3.あなたに続行していただく事が絶対に必要なのです。4.迷うことはありません、あなたは続けるべきです」と答えるのみです。
 Eは絶対的な権威者であり、Tは一般大衆であり、Lは顔も知らぬ犠牲者ということです。そして実験の結果、実に65%もの人が450Vまで電圧をあげました。つまり多くの人がアイヒマンになりうるという結果がでたわけです。なお、この実験における被験者はTのみで、Lは大学関係者であり、電流は流れておらず、苦痛の叫びは予め録音されたものです。この実験結果は、1963年に「服従の行動研究」として発表され、賛否両論が激しく論じられ、今も決着がついていません。そして映画もまた、この実験についての評価を下していません。
 私自身は、このような実験には嫌悪感を抱きます。この実験結果を見るまでもなく、私は自分自身の中にアイヒマンがいることを自覚しています。それよりも、こうした実験は大衆心理の捜査や洗脳につながるのではないかと危惧します。事実、この研究については、軍が大変興味を示したとのことです。

0 件のコメント:

コメントを投稿