2018年9月12日水曜日

「スペイン王家の歴史」を読んで


マリア・ピラール・ケラルト・イエロ著、青砥直子・吉田恵訳、原書房、2016

 西ゴート王国から現代に至るまでのスペインの王家の歴史を述べています。イベリア半島は、その地理的な位置から、さまざまな民族が入り込みました。ローマ帝国の末期に、ゲルマン人の国家である西ゴート王国が支配し、さらにその後800年間にわたってイスラーム教徒の支配を受けますが、それに対して多くのキリスト教国が成立しますが、これらの国の君主についての説明は、いささか退屈です。15世紀末にスペインは統一され、その後ハプスブルク家やブルボン家が王位を継承し、市民戦争とフランコ独裁を経て、現在ブルボン家がスペインの王位にあります。






 私は以前スペイン語を学んだことがあり、スペインの歴史も多少勉強しました。これは私のまったく個人的な感想ですが、スペインの歴史にはいつももの悲しさが漂っているような気がします。つまり、いつも高邁な理想を掲げて突き進み、結局挫折するという、ドン・キホーテのような姿です。これも個人的な感想ですが、エル・エスコリアル修道院は、こうしたスペインの姿を象徴しているように思われます。エル・エスコリアル修道院は、マドリードから45キロ離れた標高1千メートルの台地に、16世紀後半にフェリペ2世の命令で建設されました。フェリペ2世は建築家に、立派な修道院と私の掘立小屋を造ってくれと言ったそうで、実際フェリペ2世の部屋は質素だったそうです。この部屋から彼は、全世界に向けて号令を発し、やがてスペインは没落へと向かって行きます。
 しかしエル・エスコリアル修道院は不滅でした。この建物は、宮殿とともに、多くの美術品を所蔵する美術館、フェリペ2世を始めとする多くの君主の墓所、貴重な蔵書を保存する図書館であり、まさに人里離れた台地に建つ孤高の存在であり続けています。
 本書の特色は、歴代君主についての説明よりも、彼らに関わる美しい絵や写真が大量に用いられているところにあります。本文を読まなくても、これらの絵や写真を見ているだけで、十分に楽しいと思います。
 なお、このブログで私は、スペインに関する映画や書籍を多数紹介しています。その半分近くがスペイン内戦に関わるものなので、これらによってスペイン史のすべてを語ることはできませんが、日本ではあまり知られていない内容もありますので、機会があれば参照して下さい。

エジプトで制作された映画ですが、イスラーム支配時代のスペインを舞台にしています。
「「スペイン黄金時代」を読む」
「三人の女性の物語 女王フアナ」狂女と呼ばれたカスティリャ女王
映画「アラトリステ」を観て」
「映画でセルバンテスを観て」
「「宮廷画家ゴヤは見た」を観て」天才画家ゴヤが観た動乱のスペイン
「「スペイン戦争 ジャック白井と国際旅団」を読む」スペイン戦争に参加した日本人
「「バスク大統領亡命記」を読んで」
「「子供たちのスペイン戦争」を読んで」
「映画「スリーピング・ボイス」を観て」
「映画「サルバドールの朝」を見て」

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