2018年4月28日土曜日

映画「エリザベス1世」を観て


 2005年にイギリスのテレビ放送用に制作された歴史ドラマで、邦題には「愛と陰謀の王宮」というサブタイトルがついています。エリザベス女王については、このブログの「三人の女性の物語 「エリザベス」 (1998年、イギリス)/「エリザベス:ゴールデン・エイジ」 (2007年、イギリス)(http://sekaisi-syoyou.blogspot.jp/2014/01/blog-post_1222.html)を参照して下さい。前者がエリザベスの誕生から女王即位までを、後者がアルマダ海戦での勝利までを扱っています。また、「「エリザベス1世 大英帝国の幕あけ」を読んで」(http://sekaisi-syoyou.blogspot.jp/2016/10/1.html)も参照して下さい。そしてこの映画は、アルマダ海戦の翌年、1589年から始まり、晩年のエリザベス女王と、彼女が寵愛したエセックス伯ロバート・デヴァルーとの関係を描きます。
エリザベスは、生涯独身で過ごしました。彼女の結婚については色々取りざたされ、特にスペインとの対抗上フランスの王子との結婚が真剣に検討されましたが、これでは小国イギリスが大国フランスに飲み込まれてしまう危険があるため、実現しませんでした。またレスター伯ロバート・ダドリーとの結婚も真剣に検討されました。ロバートは、カトリック女王メアリーの時代にエリザベスとともにロンドン塔に幽閉された人物で、1558年にエリザベスが国王に即位すると、エリザベスはロバートとの結婚を真剣に考えましたが、結局この結婚は、君主が国内の貴族の妻になるという変則的な事態を招くため、実現しませんでした。そしてロバートは、1588年アルマダ海戦の直後に病死します。
映画は1589年から始まります。この頃からエリザベスは、30歳も年下のエセックス伯ロバート・デヴァルーを寵愛するようになります。このエセックス伯はレスター伯の義理の息子で、実は実子であるという説もありますが、真偽については分かりません。いずれにせよ、エセックス伯は女王の寵愛を利用して権力を握ろうとし、いろいろ策動しますが、その度にエリザベスの怒りを買います。そして結局、エセックス伯は反乱を起こし、1601年に処刑され、エリザベスも2年後に死亡します。エリザベス女王は、彼女の死後理想化され、イギリスの理想的君主のように考えられるようになります。前に観た二本の映画は、理想化されたエリザベスを描いているように思いますが、この映画は、男出入りの多かったエリザベスのもう一つの側面を描いています。
 なお、この映画でエリザベスを演じたヘレン・ミレンは、シェイクスピア原作の映画「テンペスト」で主役を演じ(「映画でシェイクスピアを観て テンぺスト」http://sekaisi-syoyou.blogspot.jp/2015/10/blog-post_17.html)、また「終着駅 トルストイ最後の旅」でトルストイの妻を演じており(「映画でロシア文学を観て 終着駅 トルストイ最後の旅」http://sekaisi-syoyou.blogspot.jp/2016/04/blog-post_30.html)、なかなか芸達者な女優です。

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