2017年5月6日土曜日

映画「マスター・アンド・コマンダー」を観て

2003年にアメリカで制作された映画で、ナポレオン戦争時代に、南太平洋で行われた小さな海戦を描いています。タイトルの「マスター・アンド・コマンダー」というのは、イギリス海軍の階級で、「艦長」というような意味です。舞台となっているのは、「サプライズ号」というフリゲート艦です。フリゲート艦とは、小型・高速の軍艦のことで、偵察などに用いられます。
ナポレオンは、フランス革命中にイタリア遠征を行い、さらに1798年にはエジプトに遠征しますが、ナイルの戦いでネルソン率いるイギリス海軍に敗北します。1802年アミアン和約で一時平和が回復しますが、1804年にナポレオンが帝政を開始すると、再び英仏関係が悪化し、ナポレオンは1805年にイギリスへの上陸を企てます。この映画は、こうした緊迫した情勢を背景として起こった、ナポレオン戦争の一コマを描いています。

サプライズ号の艦長ジャック・オーブリーは、かつてナイルの戦いでネルソンのもとで戦っており、彼はネルソンを深く尊敬していました。彼は、フランス海軍のアケロン号を拿捕するよう命じられ、カリブ海に向かい、アケロン号を追って南米大陸の南端を回り、さらに北上してガラパゴス諸島の近くでアケロン号を拿捕することに成功します。映画のストーリーはこれだけですが、その過程で船長と乗組員たちとのさまざまな葛藤が描かれます。 
狭い船に多くの乗組員が乗り込み、長い航海をします。航海は常に死と隣り合わせであり、乗組員たちにストレスがたまります。船長の大きな役割は、こうした乗組員たちをいかにコントロールするかということです。船上では厳格な規律が守られる必要がありますが、あまり厳しすぎると、水兵が反乱を起こす可能性があります。前に観た「戦艦バウンティ号の反乱」(「グローバル・ヒストリー 第21章 大西洋三角貿易 http://sekaisi-syoyou.blogspot.jp/2014/01/21.html)は、こうした例です。サプライズ号のマスター・アンド・コマンダーであるジャックは極めて有能な船長で、水兵たちからも尊敬され、彼らを巧みに統制して、長い航海の果てに目的を達成します。したがって、この映画は戦争映画というよりも、閉鎖された戦艦の中での群像劇として描かれたものだと思います。
 舞台はほとんど船の中だけであり、女性は一人も登場しません。10代前半の少年が数人乗組員として乗っていますが、これは当時よくあることでした。船員の子供やジェントリの次男や三男が船乗りになることを望んで、見習いとして乗り組んでいるのです。多くの船員は、このように幼い頃から船に乗り、やがて一人前の船乗りになっていきます。こうした人々が、大英帝国の海上発展を支える人々となっていきます。また、この戦艦には船長の親友である博物学者が乗船しており、彼がガラパゴス諸島に上陸して、さまざまな標本を採取する場面があり、後のダーウィンを連想させて、大変興味深い場面でした。
 結局、この戦いの数カ月後に、ネルソンが率いるイギリス艦隊がトラファルガーの海戦でフランス艦隊を破ります。これ以後ナポレオンは大陸制覇に向かい、イギリスはなお10年近くナポレオンとの戦いに苦しみますが、トラファルガーの海戦によってイギリスはとりあえず、フランス軍の上陸を阻止することができました。この映画での戦いも、そうした戦いの一環でした。

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