2020年2月5日水曜日

「武蔵武士団」を読んで

関幸彦編 2014年 吉川弘文館
 中世という時代は、日本史でもヨーロッパ史でも、大変理解しにくい時代だと思います。多分中世を理解しにくくしている理由の一つは、所有・権利関係が非常に複雑だったからではないかと思います。日本史を学んだ高校生の中には、平安時代の次は江戸時代だとおもっている生徒もいるそうで、それほど中世は生徒の印象に残りにくい時代だということなのでしょう。そもそも「中世」などという時代区分が可能なのかどうかも分かりませんし、中国史に至っては、もはや中世などという言葉も使用されません。
 とはいえ、あえて日本史で中世という言葉を用いるなら、それは武士の成立と深く関わっており、このブログでも「映画で武士の成立を観て」(https://sekaisi-syoyou.blogspot.com/2014/02/blog-post.html)で武士の成立に触れています。本書のテーマである関東武士団とは坂東武者とも呼ばれ、武勇に優れ、やがて鎌倉幕府を支える勢力となっていきます。そこで問題となったのは、武士は自生的に発生したのか、上位権力・権威と結んで形成されたのかという問題で、これが日本史の封建制の問題と絡めて論じられました。結局、今日では、武士はより上位の権力・権威により自らを正統化していったという見解が主流を占めており、その上位権力・権威の頂点に天皇がいたわけです。天皇はますます実権を失っていく中で、結局今日まで天皇制が維持された理由の一つは、ここにあるのではないかと思います。

 本書は、こうした視点で関東武士団を具体的に解説しており、門外漢の私には細部まで読み切ることはできませんでしたが、それでも大変興味ある内容でした。

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