2019年2月20日水曜日

映画「戦場のブラックボード」を観て



2015年に制作されたフランス・ベルギーによる合作映画で、第二次世界大戦におけるドイツ軍のフランス侵入を描いていますので、前に観た「ダンケルク」と同じ時代です。ドイツ軍が侵入した北フランスは、第二次世界大戦でも戦場となったため、この地方の住民には政府から、ドイツ軍が侵攻した場合南へ移動するよう指示されていたようです。その結果800万人もの人が故郷を捨て、この映画によれば「20世紀最大規模の民族移動だった」そうです。映画は、この移動の数日間を描いています。なお、この時代のフランスについては、「映画でヒトラーを観て」の「禁じられた遊び」「黄色い星の子供たち」(http://sekaisi-syoyou.blogspot.com/2014/02/blog-post_24.html)を参照して下さい。
 舞台は、北フランスのレブッキエールという小さな村で、そこの農場でハンスとマックスという父子が働いていました。ハンスはドイツで反ナチ運動をして弾圧され、息子マックスとともにフランスへ亡命していました。しかしハンスはスパイと疑われて逮捕され、その後まもなくドイツ軍が侵攻して村人たちは村を出ることを決意します。マックスも女性教師ブロンデル先生に守られて村を出ます。一方ハンスは刑務所を脱獄してマックスを追います。ブロンデル先生とマックスは、通りすがりの村の学校の黒板に自分たちの行き先を記し、それを見たハンスがあらゆる障害を乗り越えてマックスを探し出し、二人は再開します。これがこの映画のストーリーで、英語版のタイトルは“Come what may”「どんなことがあっても」です。

 映画は、この二人の親子の物語と並行して、村人たちの旅の様子を描き出します。私は、多くのフランス人がドイツ軍に追われて南へ移動した事実は知っていましたが、その具体的な様子については想像したこともありませんでした。映画では、さまざまな家族が僅かな荷物をもって、徒歩や馬車で移動します。行き先はノルマンディーの港町ディエップですが、そこについてどうするかということは分かりません。ただ、予め覚悟していたことなので、移動は意外に整然と行われ、あちこちで移動の集団と出くわします。また、あちこちにドイツ軍の攻撃で殺された死体が転がっていました。そしてついにドイツ軍が彼らを追い越していきます。こうなると、さらに先へ進んでも、結局ドイツの占領地内を進むだけで、ディエップもすでに占領されているはずです。そのため、村人たちは話し合い、このまま進む人と、故郷に帰る人に分かれることになりました。

 この映画は、「すべてを捨てて旅をした人たちの証言をもとにしています」ということで、ことさら悲惨に描かれているわけではありまさせん。むしろ戦争におけるさまざまな人の顔が、淡々と描かれているように思います。

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