2018年11月7日水曜日

「イランとイスラム」を読んで


森茂男編、2010年、春風社
本書は、イランとイスラムをテーマにした国際セミナーが開催され、参加者のうち8人のイラン人を含む18人の研究者の執筆により出版されました。このように言うと、本書は専門家による高度な専門書のように思われますが、表紙にあるように、イランにおけるファッションなど意外に分かりやすいテーマを扱っています。
 イラン人は、紀元前8世紀に成立したメディア王国以来、2700年以上の歴史をもち、7世紀にイスラーム化するまでに、アケメネス朝ペルシアとササン朝ペルシアという世界史上でもずば抜けた文明を形成ました。そして、その後千年近くの間に、イランは多くの民族の支配を受けつつ、イスラーム教を自らの宗教として受容していきます。私は、この間のイランにおける政治的変動についてはある程度知っていますが、イラン人がイスラーム教を受け入れていく過程については、何も知りませんでした。
 本書はこうした疑問について、さまざまな角度から説明しています。この過程は、イランのイスラーム化であると同時に、イスラーム教のイラン化の過程でもありました。要するに「習合」が起きたのです。ヨーロッパでも、キリスト教が普及していく過程でゲルマンの宗教との習合があったし、日本でも神仏習合が起きました。この過程は、どこでも千年単位の長い時間を必要としました。
 本書は、その具体的な例を多数あげていますが、その内容は多岐にわたっているため、ここでは触れません。ただ、例えばペルシアにとって悪魔だったアレクサンドロスが、イスラーム世界で英雄に変貌していく過程や、旧約聖書に依拠するイスラーム教の創世神話がペルシア的(ゾロアスター教的)創世神話に置き換えられ、それがイスラーム教に影響を与えていく過程などは、大変興味深く読むことができました。


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